1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10836003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 正人 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (30091440)
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Keywords | ショウジョウバエ / 温帯適応 / 耐寒性 / 高温耐性 / 体眼 / 食物選好性 |
Research Abstract |
タカハシショウジョウバエ種亜群とトラフショウジョウバエ種亜群に属する亜熱帯低地種、亜熱帯高地種、温帯種間の系統関係を、cytochrome oxidase subunit I(COI)およびglycerol-3-phosphate dehydrogenase(Gpdh)遺伝子の塩基配列をもとに調べた。その結果、少なくとも、トラフショウジョウバエ種亜群の温帯種は、亜熱帯低地種より亜熱帯高地種に系統的に近く、この種亜群での熱帯から温帯への進出は、亜熱帯高地を経た可能性が高い。これら亜熱帯低地種、亜熱帯高地種、温帯種の休眠および温度適応について調べた結果、以下のことが明らかになった。1)温帯種は耐寒性が高く、また越冬のため秋に生殖休眠に入る、2)亜熱帯種は耐寒性が低く、休眠しない、3)亜熱帯低地種および温帯種は高温耐性が高いが、亜熱帯高地種は低い、4)亜熱帯低地種は11℃では卵巣を発達させることができないが、亜熱帯高地種と温帯種適応は発達させることができる。以上のことから、亜熱帯高地種といえども、温帯に進出することはそれほど容易ではなく、休眠、耐寒性および高温耐性の獲得など生理および代謝機構の大幅な改変が必要であったと考えられた。 次に、亜熱帯種の食物選好性について調査を行い、これまでに報告されている温帯種の選好性と比較した。その結果、温帯では、果実を利用する種が少なく、草本類の腐敗した葉、腐敗したキノコを利用する種が多いことが明らかになった。この違いは、温帯と亜熱帯の植物相の相違、また、競争者の多さと多様性の相違を反映していると考えられた。以上の結果から、亜熱帯から温帯へ進出するには、草本類の腐敗した葉、腐敗したキノコなど、温帯に豊富にある資源に適応した種の方が有利であると考えられた。
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