1999 Fiscal Year Annual Research Report
太平洋・日本海間における海洋生物の種分化・遺伝的分化に関する比較分子系統学的研究
Project/Area Number |
10836007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 茂明 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (20242175)
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Keywords | 海洋生物 / 種分化 / 遺伝的分化 / 分子系統学 / ミトコンドリアDNA / ウミニナ類 / バテイラ / 亜種 |
Research Abstract |
干潟に生息する直達発生性巻貝ホソウミニナについてミトコンドリアDNA・COI領域の塩基配列に基づき、集団構造の解析を行った。同種の集団は互いに遺伝的交流がない5つの地方集団から構成され、それらはさらに五島列島付近を境に北九州から北海道に分布するグループと九州西岸および本州太平洋岸に分布するグループに大きく分かれる事が示された。北海道(太平洋岸、日本海岸、オホーツク海岸)集団は、全体として均一で遺伝的多様性が極度に低く、比較的最近、瓶首効果を経験している事が示唆された。プランクトン幼生期を持つ近縁種であるウミニナとの比較を通して、幼生型が集団構造形成に与える影響を解析する予定である。 同様の手法により、亜種とされる太平洋岸産のバテイラと日本海岸産のオオコシダカガンガラの集団解析を行なったところ、両者の間には統計的に有意な遺伝的差異が存在するが分化には不完全である事が示された。分岐年代の推定の結果、最終氷期後の日本海に侵入したバテイラ集団が地理的に隔離され、太平洋集団との間に遺伝的差異を蓄積したものがオオコシダカガンガラであり、自然選択又は創始者効果による形態分化が先行していると考えられた。 この他、潮間帯、潮下帯の底生生物クボガイ、イシダタミ、クロズケガイ、ウラウズガイ、トコブシ、カメノテ、イトマキヒトデ、深海性のキタクシノハクモヒトデ等の個体群について、日本海・太平洋間の遺伝的分化に関する予備的な解析を行った。また東京大学海洋研究所研究船白鳳丸KH99-4次航海において日本海産動物プランクトン優占種のうち、太平洋にも出現するツノナシオキアミ、ニホンウミノミ、キタヤムシ等を採取・冷凍保存した。これらについては、来年度に解析を予定している。
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