1999 Fiscal Year Annual Research Report
潮汐環境における生物リズムのパターン発現の多様性とその測時機構
Project/Area Number |
10836014
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
三枝 誠行 岡山大学, 理学部, 助教授 (80135962)
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Keywords | 亜潮間帯 / 小型甲殻類 / 水柱 / 出現 / 周期性 / 地域によるパターンの違い / 捕食者 / 測時機構 |
Research Abstract |
亜潮間帯には多数の小型甲殻類が生息しており、それらはプランクトンとベントスに大別される。このような小型甲殻類の活動には周期性が認められる。本研究の目的は、小型甲殻類の持つ活動の周期性について、1)同一の生息場所で見られるパターン発現の多様性、2)異なる生息環境で見られるパターンの特徴、ならびに3)ベントスとプランクトンでの違いを明らかにし、それらの知見に基づいて周期性の発現にどのような環境因子が強く関与するのか、また周期性の持つ適応的な意義について考察することである。 まず、瀬戸内海の牛窓で行った野外調査では、多くの小型甲殻類が夜行性の出現パターンを示した。多くの種類で潮汐サイクルに同調が見られたが、同調の程度は種類によって異なった。ベントス性の種類に比べて、プランクトン性の種類は夜行性の程度が弱かった。同様な野外調査が厚岸(北海道)、菅島(三重県)、西表島(沖縄県)で行われ、各々の地域での特徴が比較された。その結果、西表島ではほとんどすべての種類が強い夜行性を示すことがわかった。亜熱帯域は海水の透明度が著しく高く、それに適応して視覚による捕食者が多い。熱帯域の小型甲殻類に見られる強い夜行性は、これらの捕食者を回避するために発達した性質と思われる。 このような野外調査と平行して、実験室における小型甲殻類の周期性の発現機構も研究された。その結果、1)プランクトン性の種類はベントス性の種類に比べて内因的な周期性が弱い、2)実験室の結果からは潮汐リズムと昼夜リズムの区別が出来ない、3)同調因子に対する反応の仕方が陸上動物とは全く異なる、4)活動をもたらす因子(振動体)は2つあることがわかった。亜潮間帯にすむ小型甲殻類の持つ生物時計の性質は、陸上生物の持つ概日時計の初歩的な段階にあると考えれば説明がつく。また、生物時計の起原は底生生活の始まりにあるように思われる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] M. Saigusa et al.: "Emergence patterns of small subtidal・・・"Journal of Oceanograpy. (印刷中). (2000)
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[Publications] Saigusa & K. Oishi: "Emergence of small invertebrates・・・・"Benthos Research. 54. 59-70 (1999)
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[Publications] K. Oishi & M. Saigusa: "Rhythmic patterns of abundance・・・・・"Marine Biology. 133. 237-247 (1999)
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[Publications] M. Saigusa: "Hatching of an estuarine crab,・・・・"Journal of Oceanography. 56. 93-102 (2000)
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[Publications] M. Saigusa & K. Oishi: "Emergence rhythms of subtidal・・・・・"Zoological Science. (印刷中). (2000)
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[Publications] M. Saigusa: "Daily rhythms of emergence and factors・・・・"Ecological Research. (印刷中). (2000)
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[Publications] M. Saigusa: "生物学データ・ブック"朝倉書店 (印刷中).
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[Publications] M. Saigusa: "Geometrization of Physics"Kasan State Univ., Russia (印刷中). (2000)