1998 Fiscal Year Annual Research Report
消化管内繊毛虫の構成に基づく後腸発酵性草食動物の系統に関する研究
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10836019
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
今井 壮一 日本獣医畜産大学, 獣医畜産学部, 教授 (90120758)
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Keywords | 後腸発酵性草食動物 / 繊毛虫 / ウマ / ハイラックス / カピバラ / 系統分類 |
Research Abstract |
本年度は、蒐集した日本産ウマ(木曽馬)、サウジアラビア産ハイラックスおよびボリビア産カピバラの消化管内容を調査した。木曽馬からは7科23属50種が同定されたが、これらはすべてこれまでに洋・軽種馬ならびに競走馬から報告されている種で、固有種は認められなかった。また繊毛虫密度も他のウマのものとほぼ同様の数値が得られた。長期間にわたって他のウマとの交流の少なかった日本在来馬と、欧米から輸入されたウマの繊毛虫構成が類似していたことは、ウマの大腸内繊毛虫が宿主が世界各地に拡散する以前から安定した構成を有していたことを示唆しているものと考えられた。ハイラックスからは体長2mmを超える巨大な繊毛虫が検出された。この虫体には体表全体に繊毛の派生が認められ、また、特徴的な1本の溝が虫体後方から体側面を通り前端を越え、反対の体側面に伸び尾端近くまで達していた。光顕切片および割断走査電顕像では極めて特異な内部構造が観察された。外質はHE染色に濃染する微細な線維で構成されており、虫体表面の溝から肉質に向かう連続した漏斗状の構造が存在した。虫体中央部表面には1個の開口部とそれに続く管状の構造物が見られた。これらの構造は類似した外形をもつ反芻動物胃内のIsotricha属などとは著しく異なっており、さらに詳細な比較形態が必要となるものと思われた。カピバラの大腸内繊毛虫についてはこれまでにいくつかの報告がなされているが、著者らが新たに開発したピリジンー炭酸銀およびプロタルゴール変法を用いた鍍銀法を用いて検査を行った結果、大幅な分類の変更を要することが明らかとなり、検出された24種のうち11種を新種とすべきであり、これらに対して新属、新科の設定も必要であろうと思われた。
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