機能的画像診断と磁気刺激を用いた脳機能障害に対する治療法の確立

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10838017
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 喜多村 祐里 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (90294074)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 外池 光雄 工技院電子技術総合研究所, 大阪LERC, ラボリーダー ; 久保田 競 日本福祉大学, 情報社会科学部, 教授 (30027479) ; 柳田 敏雄 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30089883)
• Keywords: 脳機能マッピング / リハビリテーション / 脳の可塑性 / 磁気刺激 / 中枢神経伝導速度 / 運動麻痺

Research Abstract

運動性皮質に障害のある患者で、機能訓練により運動麻痺を改善させられる場合のあることは経験的に知られており、脳機能障害に対するリハビリテーションはこれを実践してきたものといえる。最近になって、非侵襲脳機能計測技術が発達し、脳の構造と機能を実時間で視覚的に捉えることが可能になるとともに、運動麻痺が改善されるにつれて脳損傷を受けた周りの領野が活発に働くようになるということが科学的に示された(1995)。
本研究では、脳損傷による機能障害の改善を従来のように患者の自己修復能に大きく委ねるのではなく、運動学習や記憶促進のメカニズムを神経生理学的見知から考えながら、経皮的磁気刺激法を治療訓練に応用することを目的とした。
経皮的磁気刺激は患者に苦痛を与えることなく安全に運動を誘発することができる(1985)が、主に複合筋の活動電位(表面筋電図)とそれを惹起する中枢神経伝導速度の測定による病態評価方法として用いられてきた。そこで第一段階としては、成人の脳卒中患者を対象に集中的リハビリテーションの開始前と終了時に磁気刺激を行い、病態把握と脳の可塑性による機能地図の再編成を調べる目的で機能マッピングを行った。同時に機能的MRIによる画像診断も行った。また実際の神経学的所見による治療効果の評価は、Fugi-Meyer運動機能評価法およびSIAS(Stroke Impairment Assessment Set)の両者を用いて詳細な検討を行った。
その結果、リハビリテーションによる上肢機能の回復過程の一時期において同側性支配の出現が認められた。また、ある程度の機能回復後にはその同側性支配が再び消失するということも明らかになった。
このことで、リハビリテーションの科学的合理性と機能回復過程における脳の可塑的変化が示され、患者本人のみならず治療訓練に携わる者にとって励みになるであろうと思われる。
今後はさらに症例数を集めて論文雑誌による成果の公表を行い、第二段階として倫理委員会による承認とインフォームドコンセントを得ることによって、経皮的磁気刺激のリハビリテーション治療への応用を進めていく予定である。

Research Products

• [Publications] Miyai I.et al.: "Middle cerebral artery stroke that includes the premotor cortex reduces mobility outcome"Stroke. 30. 1380-1383 (1999)
• [Publications] Miyai I.et al.: "Wallerian degeneration of the pyramidal tract does not affect stroke rehabilitation outcome"Neurology. 53. 1375-1376 (1999)
• [Publications] Nakamura K.et al.: "Activation of the right inferior frontal cortex during assessment of facial emotion"Journal of Neurophysiology. 82. 1610-1614 (1999)