1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒツジを用いた変形性間節症のモデル作出と治療の試み
Project/Area Number |
10839005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
望月 学 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90261958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 亮平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (80172708)
佐々木 伸雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60107414)
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Keywords | 変形性関節症 / 骨関節症 / 前十字靱帯 / ヒツジ / 軟骨 |
Research Abstract |
当該年度は羊の前十字靭帯切断による変形性関節症(骨関節炎、以下OA)モデルの作成を試みた。 健康な羊に対し左膝関節の前十字靭帯切断術(切断群)および右膝関節の膝関節包切開術(非切断群)を実施し、それぞれ術後12週問および24週間経過を追跡した。安楽死後に膝関節を採材し、関節面の肉眼的検索、組織学的検索および生化学的検索を行った。また4週ごとに関節液の採材を行い、生化学的検索を行った。対照群についてはいずれの手術も実施せず、同様の採材および測定を行った。 処置後の跛行のピークは4〜8週であり、その後はほぼ正常な歩行を示した。肉眼的な軟骨の評価では、軟骨の糜爛が切断群に多く認められ、特に脛骨側で顕著であった。また明らかな骨棘形成が術後12週目までに主に関節の辺縁部に認められた。組織学的にも軟骨層深層までの裂溝・糜爛、およびメタクロマジーの消失が切断群に多く認められ、細胞のクラスターも裂溝などの構造の変化が認められた部位に多く存在していた。しかし、12週と24週間の差は大きなものではなかった。一方、関節液量や総蛋白量は術後切断群が非切断群に対し有意に高値を示し、滑膜炎の存在を示唆した。しかし、関節液中の関節マーカーであるS-GAG量やMMP-1活性値では、実験期間を通じ切断群が非切断群よりも高値を示したものの、明らかな差は認められなかった。 以上の結果から、羊の前十字靭帯を切断することにより切断後12週目にはOAと考えられる病態が発生したことが明らかとなった。しかしその後の進行は緩やかであり、軟骨の修復が生じたものと考えられた。これらの病態は推移はOAの一つの特徴であり、これがOAモデルとして適切であることを示すものであった。現在この方法を用いて作成したOAモデルに対し、各種薬剤投与による予防法および治療法の検討を行っており、計画は順調に進行している。論文としての発表は現在準備中である。
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