1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒツジを用いた変形性関節症のモデル作出と治療の試み
Project/Area Number |
10839005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
望月 学 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90261958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 亮平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (80172708)
佐々木 伸雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60107414)
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Keywords | 変性性関節症 / 前十字靱帯 / ヒツジ / 軟骨 / ヒアルロン酸 / マトリックスメタロプロテアーゼ |
Research Abstract |
当該年度は、昨年に作成法を確立した前十字靭帯切断ヒツジ変形性関節症(OA)モデルを用い、関節軟骨の保護作用および抗炎症作用を持つとされる高分子多糖体であるヒアルロン酸(HA)および軟骨変性に主要な役割を果たすマトリックスメタロプロテアーゼの阻害剤(MMPI)による、OAの進行に対する効果を比較した。 左膝関節に前十字靭帯切断術を行った22頭のヒツジを4群に分け、それぞれ生理食塩水(NaCl群)、HA関節腔内(HA-ia群)、HA静脈内(HA-iv群)、およびMMPI(MMPI群)を、術後11週まで計13回投与した。術後4週ごとに跛行のスコアリングおよび左膝関節からの関節液採取を行い、生化学的検索を行った。術後12週に膝関節を採材し、関節面の肉眼的および病理組織学的評価からOA進行の程度を検討した。 跛行スコアおよび関節液量、総蛋白量、グリコサミノグリカン量、MMP-1活性値の変動は各群間に有意な差は認められなかった。骨棘の肉眼スコア、軟骨の肉眼スコア、軟骨の組織スコアにおいて、NaCl群はいずれも高いスコアを示したのに対し、HA-iv群では軟骨の肉眼スコア、軟骨の組織スコアにおいてNaCl群よりも有意に低いスコアを示しており、軟骨の変性は軽度であった。しかし骨棘の肉眼スコアはHA-iv群でNaCl群よりも高いスコアを示していた。一方、HA-ia群の形態学的スコアはNaCl群よりも若干低く、MMPI群はNaCl群とほぼ同程度であった。 以上の結果から、HA-iv群、HA-ia群の両方で、程度の差はあるものの軟骨変性制御と考えられる所見が形態学的に認められ、HAの静脈内および関節内投与はOAに対する有効な治療法であると考えられた。MMP阻害剤の関節腔内投与によるOAに対する有効な効果はほとんど認められなかった。論文としての発表は現在準備中である。
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