1999 Fiscal Year Annual Research Report
症候性てんかん犬における神経内科学的分類及びてんかん発生機序の分子病理学的研究
Project/Area Number |
10839008
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
籠田 勝基 鳥取大学, 農学部, 教授 (80091437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 崇 鳥取大学, 農学部, 助手 (20216849)
森田 剛仁 鳥取大学, 農学部, 助手 (70273901)
島田 章則 鳥取大学, 農学部, 教授 (20216055)
佐藤 耕太 鳥取大学, 農学部, 助手 (50283974)
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Keywords | 脳波 / てんかん / 症候性 / イヌ |
Research Abstract |
本研究では症候性てんかん犬のてんかん発生メカニズムの解明を最終目的とし、これまで以下の結論を得た。症例:マルチーズ(3歳6ヶ月、雄)。1歳時より全身性痙攣および易怒性を呈するようになる。症状は全身性発作で、四肢の硬直および遊泳運動を主徴とする。血清学的検査にて総胆汁およびアンモニア値がやや高いこと、X線検査で肝が小さく、門脈造影X線像にて門脈シャント(門脈が直接後大静脈に連絡)が確認された。CT検査では大脳皮質に壊死と思われるlow densityの領域が散在していた。以上の所見より、本例は先天性門脈シャントによる肝性脳症の可能性があることが示唆された。脳脊髄液中の高速液体クロマトグラフィーによる脳内アミノ酸分析の結果、著変は認められなかった。Redding導出法による脳波検査の結果、spikeおよびspike & waveが前頭葉、頭頂葉、側頭葉および後頭葉に記録され、発作の焦点は広汎性であると考えられた。本例の病理解剖を実施し、神経病理学的検索を行った。その結果、大脳全域において肝性脳症に特徴的な裸核の星状膠細胞が多数出現していた。また、免疫組織学的に本例の星状膠細胞において、正常星状膠細胞が本来豊富に保有しているグルタミンシンセターゼの発現が弱かった。グルタミンシンセターゼは興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸をグルタミンに変換する酵素である。従って、本例ではグルタミン酸からグルタミンに変換するグルタミンシンセターゼが減少し、そのため興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰となり、てんかん発作に至った可能性が示唆された。
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