1999 Fiscal Year Annual Research Report
韓国憲法学の成立過程における国権と人権の関係-日本との比較の視点から-
Project/Area Number |
10872003
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
國分 典子 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (40259312)
|
Keywords | 韓国憲法 / 人権 / 民主化 / 立憲主義 / 憲法裁判所 / 民主主義 / 植民地支配 / 開発体制 |
Research Abstract |
今年度は、当初の予定では、昨年の研究の続きとして愛国啓蒙団体による憲法についての議論や人権観を掘り下げて吟味するとともに、植民地時代の独立運動のなかに現れる憲法論を考察してゆくことを考えていた。しかし、膨大な資料を集めるにつれ、現研究段階では当時の複雑な状況における議論の正確な理解を得ることが極めて困難であることを痛感し、研究順序を変更し、戦後の韓国における憲法論を先に概観することとした。 戦後の韓国では植民地支配を脱したあとの国家の再建過程で「民主化」が常に重要な課題として提示されてきた。この民主化はしかしながら必ずしも個人の権利に基点をおいて主張されたものとは言い難く、あるいは植民地支配に対する「自主独立」と同じ意味で、あるいは北朝鮮との比較における韓国の正統性のアピールとして、あるいは朴大統領の維新体制時代に見られるような開発体制的な民主主義の形で、外に対する国家の強化の一材料として使われてきたという側面が強い。一般的な意味での民主化は現在の第六共和国憲法の下で本格的に始まったといってよいであろう。この憲法の下では。憲法裁判所がおかれ人権への配慮が格段に強化されている点が注目される。もっとも他方で、「民主」を自らの目的のひとつとして揚げるこの憲法裁判所が、本来民主主義とは整合しないともいわれる裁判所の機能と民主主義とをどのように調和的に解釈してゆくかには未知の部分も多く、憲法裁判所の活動は、韓国憲法の発展の重要な試金石になっていると考えられる。 なお、こうした分析に続いて現在、戦後の第一共和国憲法草案起草者である兪鎭午の民主主義観および人権観を考察中である。戦後の憲法論構築過程に植民地時代の思想がどのように反映したか(あるいは反映しなかったか)を考えることで上記の植民地時代の憲法論理解のための視座も得たいと思っている。
|