1998 Fiscal Year Annual Research Report
日本とドイツにおける技能形成の政治経済学的比較研究
Project/Area Number |
10872008
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
久米 郁男 神戸大学, 法学部, 教授 (30195523)
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Keywords | 技能形成 / 日本 / ドイツ / 政治経済学 |
Research Abstract |
本年度は、日本とドイツの技能形成制度の歴史的形成過程の分析に主眼をおいて研究を進めた。代表者本人は、日本の事例を担当したが、ドイツを分析するThelen教授と緊密な連絡を取り、両国の類似性と相違点を明確にしつつ、相互に関連した体系的比較研究となるよう、分析の焦点となる産業や時期につき調整をしつつ資料収集、分析を進めた。 1: 歴史的資料・文献の収集 戦前日本の技能形成に関する歴史資料を収集する事を目指したが、本研究が歴史研究ではなく歴史的事実の政治経済学的再解釈に重点をおいていることを踏まえて、2次資料、既存研究の読み込み整理にも同等の重みをおいた。主として収集した分野は機械金属産業である。 2: 日本における技能形成制度形成過程の叙述を、上記文献・資料を踏まえて行い、それをThelen教授によるドイツの叙述と比較し、分析を進める上で更に必要とされる部分を検討し、追加的記述を行うべく努力をした。同教授の分析との対応をはかるべく、戦前期日本の同業組合関係資料を追加的に収集した。 3: 合理的選択論と制度論による解釈の確定 日本とドイツの事例の叙述の確定を待って、両事例をまず、合理的選択論の立場から解釈し、両事例の初期制度条件の差異が生み出した技能形成制度の差につき分析を行った。具体的には、各企業間の技能労働者の争奪競争をCollective Action Problem CAPという合理的選択論の観点から解釈し、それを解決するメカニズムとしての企業内福祉制度の形成と労務管理制度をドイツの業界団体と比較して分析した。そこでの主要な知見は、近代化の時期に、同業者団体=ギルドが、制度として存続したか否かが、その後の技能をめぐるフリー・ライダー問題の解決方法に影響を及ぼしたとするものである。
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Research Products
(1 results)