2000 Fiscal Year Annual Research Report
非厚生主義的厚生経済学の構築をめざして:理論と実験
Project/Area Number |
10873003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西條 辰義 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (20205628)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 直毅 一橋大学, 経済研究所, 助教授 (60272770)
下村 研一 大阪大学, 国際公共政策研究科, 助教授 (90252527)
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Keywords | テイクオーバー / スカーフ市場 / ダブルオーフション / 均衡の大域的安定性 / 責任と補償 / 衡平な資源配分 / 公理的交渉理論 / 費用配分問題 |
Research Abstract |
株式市場におけるフリー・ライダー問題。株式市場でテイクオーバーが成功するか否かに関する理論と現実とのパラドックスの検証の為に実験を行ない、その結果、現実のテイクオーバー市場ではフリーライダー問題が潜在している事、テイクオーバーの成功は入札者がターゲット企業の株式を初期所有しているかに依存しているだろう事を結論づけた。スカーフ市場モデルにおける均衡価格の大域的安定性に関する実験研究。三種類の商品がありどの二種類をとっても同じ人数の参加者にとって完全補完財となる市場モデル(スカーフモデル)の均衡価格体系を市場参加者数の関数として理論的に計算した後,カリフォルニア工科大学実験経済学研究室において被実験者15名によるダブルオークションを行なってとった実験データと比較し,理論モデルの妥当性を検討した.異なる被実験者を用いた数回に及ぶ実験の結果は理論と実験データがほぼ一致した.すなわち被実験者たちのオークションは均衡価格体系に到達せず,なおかつ不均衡価格の経路に循環性が観察された.しかし,1回のみ被実験者の中に自分にとっての完全補完財が何かを誤解した者が2名生じた実験においては全く予想外の結果が観察された. 「責任と補償」の観点からの「配分の衡平性」に関する理論研究。資源配分問題に際して、帰結に対する個人の責任要因と非責任要因とを区別し、後者に起因する社会的不均等のみを社会的補償の対象として是正する様な配分ルールの存在について、今年度は交渉問題と費用配分問題の論脈で可能性を探った。前者に関しては、代表的な交渉解(Nash解、Kalai-Smorodinsky解、平等主義解)が「責任と補償」の観点から公理的に特徴づけられることを示した。後者に関しては、選択の自由権を満たしつつ,個人の非責任要因に起因する社会的不均等を社会的に補償する様な配分ルールであって、パレート効率的配分を分権的に実行するものの存在を、実際にそれを構成して見せることで証明している。
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[Publications] Shinya Kinukawa,Tatsuyoshi Saijo,and Masashi Une: "Partial Communication in a Voluntary Contribution Mechanism Experiment"Pacific Economic Review. 5-3. 411-428 (2000)
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[Publications] 西條辰義: "排出権取引:理論と実験"フィナンシャル・レビュー. 53. 28-57 (2000)
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[Publications] 広田真一,西條辰義,濱口泰代,川越敏司: "金融の実験経済学-テイクオーバー・メカニズムに関する考察-"フィナンシャル・レビュー. 53. 58-83 (2000)
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[Publications] Yoichi Hizen and Tatsuyoshi Saijo: "Designing GHG Emissions Trading Institutions in the Kyoto Protocol : An Experimental Approach"Forthcoming in Environmental Modelling and Software. (2001)
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[Publications] Naoki Yoshihara: "A Characterization of natural and double implementation in production economics"Social Choice and Welfare. 17-4. 571-599 (2000)
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[Publications] 鈴村興太郎,吉原直毅: "責任と補償:-厚生経済学の新しいパラダイム-"経済研究(The Economic Review). 51-2. 162-184 (2000)