1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10874025
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田島 慎一 新潟大学, 工学部, 助教授 (70155076)
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Keywords | グロタンディェック留数 / D-加群 / ホロノミック系 / 局所コホモロジー / グレブナ基底 / 計算代数 |
Research Abstract |
多変数複素関数の留数は基本的概念であり、代数学や幾何学、解析学の諸問題に広く応用されている。多変数留数を用いて表現される幾何的不変量や代数的関係式、解析的公式も数多くある。しかしながら、多変数留数の値を実際に求めることは、極めて困難であり、多変数留数に関する既存の理論・枠内で多変数留数値を計算することは不可能に近い。 本研究では、線型偏微分方程式系に対するD-加群の理論と計算代数のグレブナ基底の理論に基づいて、この多変数留数の研究をおこない、特にその計算法について研究した。 本年度は、多変数有理微分形式に対し、そのグロタンディエック留数の値を求めるアルゴリズムを研究、構成した。現在、異なる3つの計算アルゴリズムを構成した。それらのアルゴリズムの一部は数式処理システムKANと数式処理システムRISA/ASIRにそのプログラムを実装し、実際に計算機を用いた計算を可能とした。我々の得たアルゴリズムの中心となる点は (1) 多変数有理関数を代数的局所コホモロジー類とみなし、そのコホモロジー類のみたすホロノミックな偏微分方程式を構成すること (2) D-加群としての、双対性を留数値の計算に応用すること (3) グレブナ基底の計算、準素イデアル分解の計算、最小多項式を利用した計算 にある。多変数留数値の決定には膨大な量の計算が必要であり、数式処理システムを利用しないで計算をおこなうことは事実上不可能である。数式処理を用いた計算をおこなうために、多変数留数に関する理論的研究を基礎からおこない、その研究に基づいて、アルゴリズムの構成、プログラム作製をおこなった。研究成果の一部は数学会、応用数理学会、数式処理学会、関連する研究集会で発表した。また、論文も投稿・執筆中である
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[Publications] 田島慎一・大阿久俊則・中村弥生: "Multidimensional nesiduc calculus and holonomic D-modules" 京都大学数理解析研究所講究録. 1033. 59-70 (1998)
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[Publications] 田島慎一・中村弥生: "微分作用素を用いた有理関数の留数計算とHorowitz algorithm" 京都大学数理解析研究所講究録. 1038. 23-30 (1998)
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[Publications] 田島慎一・中村弥生: "多変数留数計算について" 数式処理. 7. 37-40 (1998)
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[Publications] 田島慎一 中村弥生: "有理関数の留数計算に関するアルゴリズム" 城西情報科学研究. (to appear). (1999)
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[Publications] S.TAJIMA: "An algorithm for computing Grothendieclc usidues" Proc.Hayama Symposium on Several Complex Variables. 115-120 (1998)
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[Publications] S.TAJIMA.Y.Nakamura: "Residne calculus with differential operators" Kyushu J.of Mathematics. 53(発表予定). (1999)
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[Publications] S.TAJIMA: "Perturbed Lame equation and Buslaev phase (露話)" Ukraine J.of Mathematics.(発表予定).
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[Publications] 田島慎一・中村弥生: "多変数有理関数の留数計算について" 京都大学数理解析研究所・講究録. (発表予定).
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[Publications] 田島慎一: "Hermite-Jacobiの多変数補間積分" 京都大学数理解析研究所・講究録. (発表予定).
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[Publications] 田島慎一: "Grothendieck dualityの計算と多変数Hermite補間問題" 京都大学数理解析研究所・講究録. (発表予定).