1998 Fiscal Year Annual Research Report
金属を含む原子・分子小集団の赤外吸収線幅と電荷ゆらぎとの相関
Project/Area Number |
10874078
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大野 公一 東北大学, 大学院理学研究科, 教授 (60012499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美齊津 文典 東北大学, 大学院理学研究科, 講師 (20219611)
山北 佳宏 東北大学, 大学院理学研究科, 助手 (30272008)
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Keywords | 赤外 / クラスター / 線幅 / ゆらぎ / Jahn-Teller 変形 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は,金属を含む分子小集団において電子あるいは構造のゆらぎと赤外吸収線幅との相関を実測することであり,平成10年度後半に採択が決定された。以下に実施結果を記す。 1. まず,試料を希ガスマトリックス中に単離することにより,不均一幅を取り除いた条件で,赤外吸収スペクトルの測定を行った。アルカリ金属(Li,Na)とベンゼンとを低温アルゴンマトリックス中に共蒸着したところ,弱く結合した1:1錯体が確認され,ベンゼンの呼吸振動に対応するブロードな赤外吸収帯が観測された。理論計算の結果,負電荷が移動したベンゼン環には,キノイド型と逆キノイド型のJahn-Teller変形をした構造があり,それらはエネルギー的に近接しているため時間的に平均化されている可能性が示唆された。 2. 上記と並行し,金属ー分子クラスターを気相で生成し,イオン化ポテンシャルの測定と質量選別光電子分光を行った。その結果,弱く結合した分子クラスターにおいて分子の配位形式の異なる異性体が確認された。また,アルカリ金属とアセトニトリルのクラスターでは,極性分子の配位方向が中性状態とイオン状態とで異りうる。 したがって,クラスターの構造異性体間や中性-イオン間での構造変化(ゆらぎ)が振動バンドの線幅に現れる可能性が明かとなった。
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