1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10874087
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川瀬 毅 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10201443)
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Keywords | 円筒状共役分子 / フラーレン / 超分子化学 / 錯形成 |
Research Abstract |
近年注目されている物質にフラーレンやカーボンナノチューブなどの炭素同素体がある。非平面状のπ電子系をもつこれらの物質は、その発見以来、理論・実験両面から詳細な研究が行われ、いくつもの興味ある物性が見い出されてきた。しかし、π電子ローブの突き出た空孔内の性質、特に他の分子や原子との相互作用や、外側のπ系との電子状態の違いは未だに明確ではない。申請者は先にナノメータースケールの空孔を持つベルト状の共役系化合物として[n]CPPA(C_<_>yclic P_<_>ara-P_<_>henyla_<_>cetylene)1a-c(n=6〜8)を比較的安定な化合物として合成し、1cのX線結晶構造解析により実際にベルト状の共役系をもつことを確認した。この分子は共役系の内面と外面に電子状態の違いがあると考えられ、フラーレン類など、他の曲面状の共役系化合物に対する抱接挙動に興味がもたれる。本年度はフラーレンC60やC70(φ=7Å)とそれを取り込むのに十分な大きさの空孔(φ=13Å)をもつ1aとの錯形成について検討した。その結果、 (1) 1aの存在下錯形成することでハロゲン系溶媒に対するC60やC70の溶解度が十倍以上になる。 (2) 1aはC60と1:1錯体を作り、その錯形成定数はベンゼン中で、Ka=3.3x10^3である。一方、ハロゲン系溶媒中では錯形成定数はかなり大きく、塩化メチレン中では過剰量のホスト存在下-90度付近で錯化したホストとしないホスト間の平衡が止ることがNMRにより観測された。 (3) 1aはC70と1:1錯体を経て2:1錯体を作る。その錯形成定数はKalが約2x10^4、Ka2が約7x10^3と見積られた。 今後、ベンゼン系溶媒とハロゲン系溶媒との錯形成定数の違いを測ることで、曲面上の共役系間のπ-π相互作用について検討してゆく計画である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] H.Kurata: "Tetrakis(2-thienyl)allene amd 1,1,3,3-Tetrakis(2-thienyl)allyl Cation,an Electron-rich Reactive Tetraarylallene and a Remarkably Stable Tetraaryl-substituted Allyl Cation" Tetrahedron Letters. 39・40. 7135-7138 (1998)