1999 Fiscal Year Annual Research Report
北方林における更新動態:実生・稚樹の定着過程と集団の遺伝的変異から見た多種の共存機構
Project/Area Number |
10874115
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原 登志彦 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (80183094)
|
Keywords | 遺伝的解析 / 亜寒帯林 / 森林更新 / 実生 / 稚樹 / 倒木更新 / 多種共存 / 生物多様性 |
Research Abstract |
本研究では、北海道の亜寒帯林の更新・維持機構に対する実生と稚樹の定着過程の役割を解明し、今後、北方域の森林全体の更新・維持の動態を研究するための基礎とする。さらに、地球温暖化は北方林の更新・維持機構にどのような影響を及ぼすのか?といったような将来の地球環境問題を考えるための基礎研究とする。 北海道・大雪山・大雪湖付近の、エゾマツ、アカエゾマツ、トドマツ、ダケカンバなどが共存する亜寒帯林に1ha規模の調査用プロットを設置し、実生と稚樹の個体群動態、生長動態、遺伝的変異に関する調査を行った。まずその調査用プロット内に2x2mのサブプロットを30個設定してその中に出現する各樹種の実生および稚樹にすべてマークし、倒木更新などの実生の定着過程、各樹種の実生と稚樹の生長動態とその環境条件を調査した。同時に遺伝的解析用の葉のサンプリングを行い、実験室で遺伝的解析(酵素多型、DNA-RAPD,DNA-AFLPなど)を行っている。我々の仮説「亜寒帯林での多種の共存にとっては、樹冠木個体間の競争過程よりも実生や稚樹の生長生存過程が重要である」を検証すべく、どのような遺伝的特性を持ったものが実生の段階から生き残って樹冠木にまで生長してゆくのかなど、実生・稚樹の生長動態と遺伝的変異の変化を各種間および各生長段階(エイジ)間で比較し、それぞれの種の生育する環境(倒木、土壌、林床のササ密度など)との関連で解析している。また、実生と稚樹の生長過程に関しては、「定着場所と根の形態の関係が重要である」という仮設のもとに、定着場所の環境条件(倒木上のコケの状態、ササの状態、水分条件、照度条件、周りの樹冠木の胸高断面積合計など)と各種の実生・稚樹のサイズと根の形態などの相関関係も解析している。多量(約3000)のサンプルのDNA解析を行わなければならないので、完成までにあと数ヶ月かかる予定である。
|