1998 Fiscal Year Annual Research Report
氷結晶粒界面における融解相転移の実験的検証とその氷物性研究に果たす役割
Project/Area Number |
10875001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (20113623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 正樹 東北大学, 科学計測研究所, 教授 (00137887)
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Keywords | 氷結晶 / 結晶粒界 / 透過分光型偏光解析法 / 界面融解相転移 / 擬似液体層 |
Research Abstract |
結晶の粒界では、結晶表面と同様に融点近傍の温度領域ではある厚みの融解層(擬似液体層)が介在すると予測される。しかし、結晶の内部に存在する薄膜の厚みや物理特性を測定するのは極めて困難で、実験による直接的な検証はほとんど存在しない。この研究では、透過分光型偏光解析法を開発し、氷結晶の粒界における擬似液体層の厚みと光学定数を測定する。 今年度は、まず新しい透過分光型の偏光解析装置を開発した。これは、透明媒質内に薄膜が存在するとき、偏光状態のわかった光を入射すると薄膜内部で多重反射干渉が生じ、透過光の偏光状態が変化することを利用したもので、偏光状態の変化を入射角と波長の関数として測定し、薄膜の厚さと光学定数(屈折率)を独立に決めることができるものである。装置は、現有の偏光解析装置に改良を加えることで完成させた。測定には、結晶粒界を1枚だけ含む氷結晶試料を用いた。試料作成法は人工氷単結晶のロッドから切り出した単結晶を融着させて作成した。測定の結果、-3℃で界面にバルクの水と同じ屈折率を持つ融解層が存在するとすると、その厚みがおよそ6μmであると推定された。融解層の屈折率については、十分な測定精度に達していないが、今後の改善により改善されると予測され、測定法の確立という初年度の目的はほぼ達成された。 また今年度は、米国ワシントン大学のJ.Wettlaufer教授を招へいし、界面融解の問題の理論的研究についての討論を行うことができた。2年目は、氷結晶試料の作成法を改善し、界面融解層の厚みの温度依存性、界面の面方位依存性などについて系統的なデータの取得を行い、氷の界面融解相転移の物理的特性を明らかにする。
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