1998 Fiscal Year Annual Research Report
含水アルコール中におけるトリエチルボランを開始剤とする新規ラジカル反応の開拓
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10875178
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大嶌 幸一郎 京都大学, 工学研究科, 教授 (00111922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
忍久保 洋 京都大学, 工学研究科, 助手 (50281100)
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Keywords | 含水アルコール / トリチルボラン / ラジカル反応 / 原子移動 / ヨード酢酸アリル / γ-ラクトン |
Research Abstract |
含水アルコール中におけるトリエチルボランを開始剤とする新規ラジカル反応の開拓ついて交付申請書に記載した研究計画に従って研究を行い次の2つの成果を得た。 1. トリエチルボランを開始剤とする水中での原子移動型ラジカル環化反応 我々の研究室ではすでにトリエチルボランが微量の酸素の存在下に良好なラジカル開始剤となることを報告している。今回は酸素とは激しく反応するが水とは反応しないというトリエチルボランの特性を利用して水中でのラジカル反応の可能性について検討した。その結果ヨード酢酸アリルを水に懸濁させ、ここに10mol%のトリエチルボランのメタノール溶液を加えると原子移動型のラジカル反応が起こり、γ-ラクトンが高収率で得られることが明らかとなった。この反応をベンゼンやヘキサンのような有機溶媒中で行うと二量化やオリゴマー化が進行し、目的のラクトンは全く得られない。水中で基質が環化に有利な立体配座をとりやすいことがラクトン生成の鍵と考えられる。またヨード酢酸エステルとして3-オキサ-5-ヘキセニルエステルや4-オキサ-6-ペンテニルエステルを用いると9員環や10員環のラクトンが収率よく得られることも明らかとなった。 2. 水溶性ラジカル開始剤による2-ヨードアルカンアミドのアルケノールへのラジカル付加反応 水の特性をさらに有効に利用することを考え、AIBN類似の水溶性ラジカル開始剤をとりあげ、水中における種々の原子移動型分子間ラジカル付加反応について検討した。その結果、ベンゼンチオールとジアリルエーテルの反応ではベンゼンチイルラジカルが二重結合に付加し、ついで環化、最後にプロトンを引抜くことによってテトラヒドロフラン誘導体が収率よく得られることが明らかとなった。また、N.N-ジアリル-2-ヨードアセトアミドでは環化体がほぼ定量的に得られた。さらに、2-ヨードアセトアミドと5-ヘキセン-1-オールのような末端二重結合をもつアルコールとの反応ではγ-置換-γ-ブチロラクトンが一挙に収率よく得られることを見いだした。まず原子移動型のラジカル付加反応が起こり、これに続くイオン的な分子内ラクトン化によってブロラクトンが生成したものと考えられる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Yorimitsu: "Trietlylborane-Mediated Atom Transfer Radical Cyclizartion Reaction in Water" J.Org.Chem. 63・23. 8604-8605 (1998)
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[Publications] H.Yorimitsu: "Radical Addition of 2-Iodoalkanamide or 2-Iodoalkanoic Acid to Alkenols Using a Water-Soluble Radical Initiaton in Water" Tetrahedrn Letters. 40・3. 519-522 (1999)