1998 Fiscal Year Annual Research Report
単一高分子鎖の光物理過程-走査フォトン顕微鏡によるナノ空間の分光研究
Project/Area Number |
10875197
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 紳三郎 京都大学, 工学研究科, 助教授 (50127049)
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Keywords | 単一高分子鎖 / 光物理過程 / 走査フォトン顕微鏡 / 分光法 / 蛍光 |
Research Abstract |
本研究ではこの数年で可能になってきた走査フォトン顕微技術を高分子科学に適用することにより、高分子固体中における一分子鎖の光物理過程を調べ、これまで知られている高分子のマクロな光物理・化学との違いを明かにするとともに、得られた光特性をプローブとして、高分子一分子の固有のナノ構造やその分布と密接に関連する光物理過程を明らかにすることを目的としている。 本年度は研究を行うための主要機器である走査フォトン顕微鏡の改良とその性能評価を行い、上述の研究の基盤整備をした。通常の走査フォトン顕微鏡では光子計数検出器により蛍光強度をモニターしながら試料をビエゾにより面内移動させて形態観察をしているが、本研究の目的に合うようにこの装置に分光機能を付加するための分光器を設置した。また光励起を効率よく行うため、紫外線透過ができる純石英製光ファイバーを先鋭化する技術を確立することにより数10nmの開口径をもつ光ファイバープローブを作製できるようになった。これらの技術的改善により、ヘリウム-カドミウム紫外線レーザーの325nmの波長を用いて励起でき、かつ光回折限界を超える100nm以下の空間分解能をもつ走査フォトン顕微鏡が実現することができた。この装置のさらなる改良を重ねて光収集効率を分解能を高めるとともに、単一高分子鎖の光過程について1)高分子鎖の分子内エネルギー移動速度の評価、2)高分子内での励起2量体(エキシマー)形成確率の直接測定など、一本の高分子鎖の分子情報を取り出す研究を継続して行う。
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