1998 Fiscal Year Annual Research Report
多様な組成と構造を有する広葉樹天然林における酸性物質の緩衝能とその季節変動
Project/Area Number |
10876032
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中田 誠 新潟大学, 農学部, 助教授 (80217744)
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Keywords | 冷温帯落葉広葉樹林 / 酸性降下物 / 酸緩和作用 / 地形的位置 / 林内雨 / 樹幹流 / Ao層通過水 / 土壌水 |
Research Abstract |
新潟県下越地方の冷温帯落葉広葉樹天然林において、斜面上部・中部・下部にそれぞれプロットを設置して、林内雨、樹幹流、Ao層通過水、土壌水を採取し、その分析を行った。それにより地形的位置、樹種、林床植生、Ao層を含む土壌の性質、ならびに樹木フェノロジーが酸性降下物に対する森林の緩衝作用にどのような影響を及ぼすかを解析した。現地調査は1998年8月〜11月に行い、現在までのところ以下の知見が得られた。 1. 斜面上部〜中部で優占するブナの林内雨や樹幹流には樹体から溶脱されたKが多く含まれていたのに対し、斜面下部に分布するミズキやカツラにはCaやMgが多く含まれており、これらによって降雨の酸性がよく緩和されていた(降雨のpH:4.5〜5.0、林内雨・樹幹流のpH:5.5-6.5)。 2. 秋の紅葉期に樹体からの塩基類の溶脱量が著しく増加し、降雨の酸性緩和作用がとくに高かった。一方、樹木の落葉後は、林床の常緑低木やシダ類が降雨の酸性緩和に貢献していた。 3. 秋の紅葉期以降、北西季節風によって運ばれたNa、C1などの海塩成分や、SO_4、NO_3といった大気汚染物質が林内雨、樹幹流、Ao層通過水に大量に含まれており、とくに斜面上部〜中部でその影響が大きかった。 4. Ao層通過水には、Ca、Mg、Kといった塩基類が多く含まれており、降雨の酸性を緩和する上で重要な役割を担っていた。また、斜面上部〜中部よりも斜面下部の方がAo層通過水や士壌水に多くの塩基類を含んでおり、pHも高くなっていた。 5. 有機物に含まれる窒素の無機化パターンが斜面位置で異なり、斜面上部〜中部のAo層通過水でNH_4濃度が高く、斜面下部では土壌水とAo層通過水でNO_3濃度が高かった。
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