1999 Fiscal Year Annual Research Report
多様な組成と構造を有する広葉樹天然林における酸性物質の緩衝能とその季節変動
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10876032
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中田 誠 新潟大学, 農学部, 助教授 (80217744)
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Keywords | 酸性降下物 / 酸性緩衝能 / 林内通過水 / 土壌特性 / 水質特性 / 広葉樹天然林 / スギ人工林 / 海岸クロマツ林 |
Research Abstract |
1.平成10年度の調査地(新潟県下越地方の冷温帯落葉広葉樹天然林)で地形別・深さ別に採取した土壌サンプルについて、化学性の分析を行った。その結果、Ao層やA層に含まれるCaやMgなどの塩基類は斜面上部から下部に向かって順に増加しており、塩基飽和度とpHも同様の傾向を示した。これは前年度に調査したAo層通過水や土壌水の化学的性質と同じ傾向であり、降雨の土壌中での性質変化や酸性の緩衝能は、斜面位置に対応した樹種組成や土壌そのものの性質とも強く関係していることが明らかになった。 2.広葉樹林の伐採が降雨の酸性緩衝能に及ぼす影響を調べるために調査地を探したが見つからなかったため、スギ人工林において、この調査を伐採してから4カ月後まで行った。その結果、伐採地では地表面の温度上昇によってAo層の分解が進んでCaやMgが放出され、Ao層通過水では隣接するスギ林のものと同程度にまで降雨の酸性が緩和されていた。しかし、伐採地ではAo層の成分の枯渇によって、近いうちに酸性緩衝能が低下すると予想された。また、伐採地の土壌水では有機物の分解によってNO3が増加し、隣接するスギ林のものに比べてpHが低下していた。さらに伐採地ではNO3の生成によって、土壌からのCaやMgの流亡の傾向が確認された。 3.海岸砂丘地のクロマツ人工林の土壌特性が、サクラ、ヌルデ、ニセアカシアなどの広葉樹の混交によってどう変化するかを調査した。調査地の土壌はすべて砂質未熟土だったが、クロマツ林に広葉樹が混交すると、Ao層やA層にCaやMgといった塩基類が増加し、塩基飽和度とpHも上昇することが明らかになった。また、濃度だけでなく、Ca、Mg、Nといった養分の表層土壌への集積量も広葉樹の混交によって増加することがわかった。平成12年度はこのクロマツ林への広葉樹の混交が、降雨の酸性緩衝能にどのような影響を及ぼすかを調査する。
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