1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10876040
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
島崎 健二 北海道大学, 水産学部, 教授 (50001607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成松 庸二 北海道大学, 水産学部, 学振特別研究員(大学
宗原 弘幸 北海道大学, 水産学部, 助手 (80212249)
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Keywords | シワイカナゴ / 耳石日周輪 / 温度依存性決定 |
Research Abstract |
は虫類、両生類で広く知られている温度依存性決定(TSD)について、魚類でのその適応的意義を、シワイカナゴについて調査した。この魚種は春季の昇温期に繁殖することと、寿命が一年であることから、生活史を通じたTSDの適応的意義に関する研究モデルに適当と考えられた。性決定感受期および軸水温を飼育実験から、胚期から繁殖期までの生残、成長、繁殖成功度における産出日と雌雄差を野外調査と耳石日周輪紋の計数より、それぞれ明らかにした。その結果、稚魚期までのほとんどの個体は死亡するが、生き残った個体については、産出日が産卵期の中頃に産まれた個体で生残率が高かった。成魚については、水槽内の飼育実験から、早く産まれた個体ほど大型となる傾向が認められ、雌では産卵数が多くなるため、産出日と繁殖成功度の相関が示唆された。一方、雄では体サイズとつがう雌の数に相関が認められなかったことから、産出日と繁殖成功度に相関がないとみなされた。成魚の体サイズ(産出日=環境水温)と雌雄の繁殖成功度の比較からは、水温が低い繁殖初期では雌となり、水温が上昇する繁殖後期では雄となるのが有利に見えた。しかし、生活史全体で比較すると、本種のように稚魚期までに100%近く死亡し、体サイズを介して温度依存的な性決定の有利性が繁殖期のみにしか現れない場合、TSDが進化しにくいことが予想される。これがは虫類や両生類に比べ、魚類でTSDがあまりみられない理由と考えられるが、この点については、さらに現在、飼育実験結果をもとに解析中である。
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Research Products
(1 results)