Research Abstract |
(1)POS週次データと新聞記事データベースを利用して,1996年に発生した狂牛病騒動とO157食中毒事件が牛肉の小売需要に及ぼした影響を数量的に分析すること,(2)O157食中毒事件以後の現地の対応を調査し,食品安全性の確保対策の問題点を検討することを目的とした. 関東地区の量販店の生鮮肉POSデータと主要全国紙の関連記事データに需要体系モデルを適用・計測し,狂牛病およびO157食中毒事件に伴う消費者不安の高まりが小売段階の国産牛肉と輸入牛肉,他の生鮮肉の需要に及ぼした影響を検討した結果,狂牛病騒動による不安醸成は輸入牛肉の需要のみを減少させたのに対し,O157食中毒事件のそれは輸入牛肉,和牛肉を除く国産牛肉の需要を減少させ,和牛肉,国産豚肉,鶏肉の需要を増大させる効果を有したこと,各事件による不安がピークに達した週次と対前年同期の間の各生鮮肉均衡支出比率を比べると,狂牛病騒動の不安増大的情報効果は輸入牛肉の均衡支出比率減少の75%を,O157食中毒事件のそれは輸入牛肉,和牛肉を除く国産牛肉の均衡支出比率減少の75%,65%を,和牛肉,国産豚肉,鶏肉の均衡支出比率増加の90%,65%,40%を説明することが,ことが明らかとなった. 大阪中央卸売市場ではO157食中毒事件の後,貝割れの販売が完全にストップし,それ以後事件前のレベルには回復していないこと,市場内での安全管理には限界があること,また,堺市教育委員会ではO157集団食中毒事件の後処理に多大の支出を強いられたこと,安全面だけではなく学童の精神面でのケア,保護者の理解を得るためにも多くの時間をかける必要があったこと,安全性を高めるためにドライキッチンシステムに換える必要があるが多額の予算が必要となること等が明らかになった.学校給食の安全性を高めるための給食費追加負担に関し,保護者の支払意思額について今後明らかにする必要がある.
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