2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトと野生動物との共生-耕作地利用ニホンカモシカの行動-
Project/Area Number |
10876057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 衆介 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (80136796)
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Keywords | カモシカ / 動物園 / 農作物 / 広葉草本 / 落葉広葉樹 / 針葉樹 / イネ科植物 |
Research Abstract |
動物園で飼育されているニホンカモシカを供試し、農作物と野生植物の嗜好性を比較し、あわせてそれらの栄養成分との関係を調べることから、ニホンカモシカの選択摂食の要因を明らかにすることを目的とした。実験1のカフェテリア法では、ダイズ、アズキ、モミジイチゴ、タニウツギ、ヒノキの順に摂食量が多く、摂食量は粗蛋白質と正に相関し、NFEやADFと負に相関した。実験2では、植物の葉を単品で提示し、単一時間内の摂食量を比較することから、嗜好性を評価した。その結果、クズ、ダイズ、アズキ、アカソ、ダイコン、ニンジン、タニウツギ、モミジイチゴ、フキ、ハクサイ、ウワバミソウ、ニワトコ、キャベツ、ヒノキ、オーチャードグラス、ノリウツギの順に摂食量が多く、チマキザサは摂食されなかった。ハクサイ・キャベツを除く農作物とフキ・ウワバミソウを除く広葉草本はタニウツギ・モミジイチゴを除く落葉広葉樹より多く摂食され、針葉樹とイネ科植物の摂食は少なかった。摂食量はADF含量と負に相関し、粗蛋白質含量とは正に相関する傾向にあった。重回帰分析の結果、摂食量はNFE含量および乾物含量により有意に推定され、いずれの要因も正に関係した。NFEの係わりが実験1と2で異なったが、それはNFEの内容が前者ではリグニン、後者では糖類を反映したものによると考えられた。以上のように、ニホンカモシカは栄養価の高さと同時に乾物含量の高さで摂食植物を選択していたと考察した。この要因で説明できなかった嗜好性の低い植物は、ADF含量が30%を超える種、葉面に毛のある種、タンニンの極端に高い種であった。この要因で説明できない嗜好性の高かった植物は、クズ、アカソ、ダイコン、ニンジンであったが、共通する特徴は見出せなかった。今後、糖類等の甘味成分、核酸・アミノ酸等の旨み成分、アルカロイド等の苦味成分など嗜好性に直接かかわる可能性のある成分分析が必要と考えられた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 出口善隆 ほか3名: "食害状況から推定された山形市に生息するニホンカモシカの農作物への依存割合"野生生物保護. 5(1-2). 13-20 (2000)
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[Publications] Deguchi,Y.,他2名: "Relationship between chemical components of herbage, dietary preference and fresh-herbage intake rate by the Japanese serow"Applied Animal Behaviour Science. (in press).