1998 Fiscal Year Annual Research Report
水酸化グアニンのゲノム塩基配列レベルでの解析と遺伝子変異
Project/Area Number |
10877029
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
野本 実 産業医科大学, 医学部, 講師 (00164749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 宏 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (40152615)
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Keywords | 8-水酸化グアニン / 8-hydroxyguanine / 鉄・ニトリロ三酢酸 / Ferric nitrilotriacetate / Tsc 2 gene / Pkd 1 gene / Nth 1 gene / Tuberous scierosis |
Research Abstract |
目的と背景:8-ヒドロキシグアニン(以下8-OH Gua)の生成を誘起し、腎化学発癌を引き起こす「鉄.ニトリロ三酢酸」を投与し、ラット腎臓ゲノムDNA中の8-OH Guaを塩基配列レベルで解析する。腎化学発癌実験系における癌抑制遺伝子の候補とされているTsc2遺伝子や、その前後にclusterして存在している損傷塩基修復酵素遺伝子(Nth 1)及び嚢胞腎の原因遺伝子(Pkd 1)に着目し、これらの遺伝子群に8-OH Guaの生成が集中しているか否かを解析し、遺伝子塩基変異と8-OH Guaとの相関を明らかにすることを目的とする。 なお、Tsc 2遺伝子(Exon 1〜44)とPkd l遺伝子(Exon 1〜50)は、Tail to tailにゲノム上にOrganizeされており、ともに遺伝子3'-側の後半部分に塩基変異や塩基欠損・挿入等の遺伝子変異が高頻度に起こっていることが、遺伝病患者の家系解析や腎化学発癌実験動物の解析から明らかにされている。 結果と考察:現在のところ、Pkd 1遺伝子3'-末端部のExon 44及び隣接するIntron 45で、8-OH Guaと考えられる切断シグナルが集中的に見いだされた他、Tsc 2遺伝子のExon 33では修復効率の極端に悪いことを示唆するシグナル経時変化を呈するグアニン部位が数カ所非転写鎖特異的に検出された。 一方、遺伝子中央部に近いPkd 1 Exon 27では、8-OH Guaと考えられる切断シグナルをほとんど検出しなかった。また、Tsc 2Exon 21は、それほど顕著なレベルではないが、複数の8-OH Guaらしきシグナルをみとめたにすぎなかった。 結節性硬化症(Tuberous sclerosis)の原因遺伝子Tsc 2や嚢胞腎(Polycystic Kidney DIsease)の原因遺伝子Pkd 1には、調べた範囲内で、8-OH Guaを含むピペリジンにより切断される塩基修飾のレベルが高く、遺伝子変異が高頻度に観察される遺伝子3'-領域では、顕著であった。これらの遺伝病の原因遺伝子変異や腎化学発癌に、各種の塩基化学修飾が関与している可能性が強く示唆される。
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