1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトとマウス肝癌のLOH領域の相同性を利用した肝癌抑制遺伝子の単離に関する研究
Project/Area Number |
10877039
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
隅井 雅晴 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (60284220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神谷 研二 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (60116564)
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Keywords | マウス肝癌 / 肝癌抑制遺伝子 / Loss of heterozygosity / ヒト1番染色体 / マウス4番染色体 / 染色体移入 / 相同染色体 / 癌形質の抑制 |
Research Abstract |
B6C3Flマウスの肝癌より樹立した肝癌細胞株には、高頻度に4番染色体のLOHが存在した。LOHの最小欠失領域はD4Mit37領域の2cMの範囲で、この領域は肝細胞の不死化遺伝子座(Lci)を含んだ。このLOH領域はヒト染色体のlp32-36に相同し、ヒト肝癌でもこの領域のLOHが報告されており、ここに肝癌抑制遺伝子が存在すると推定されている。さらにこの領域には、神経芽細胞腫、大腸直腸癌、乳癌、悪性黒色腫などでも高頻度にLOHが存在することから、複数の癌抑制遺伝子が存在すると推定されている。そこで、我々は、ヒトとマウス肝癌のLOH領域が両者の相同染色体領域に一致することに注目し、マウス肝癌細胞にLOH領域に相同するヒト染色体断片を移入することで、癌形質の抑制を指標とした生物学的検定法を確立することを今年度の目的とした。 我々は既に、4番染色体にLOHを有するマウス肝癌細胞株は、LOHを有さない細胞株に比べ、可移植能や軟寒天培地でのコロニー形成能が非常に高いことを見いだしている。このLOHを有する細胞株に、A9マウスハイブリッド細胞から微小核移入法によりヒト1番染色体の移入を行った。次いで、ヒト1番染色体を移入した細胞の中から、軟寒天培地でのコロニー形成能とヌードマウスへの可移植能を指標に造腫瘍能を喪失した細胞株の選出を行った。現在までに、ヒト1番染色体を移入した6株の細胞株の分離に成功した。しかし、コロニー形成能及びヌードマウスへの可移植能はすべての細胞株で移入前細胞と有意差を認めなかった。この結果には大きく3つの可能性が考えられる。第1には、用いた肝癌細胞には既に多数の遺伝子変異の蓄積があり、4番染色体上にあると推定している変異した癌抑制遺伝子をヒト1番染色体で機能相補しても、癌形質は抑制できない。第2には、マウス肝癌細胞の4番染色体上の遺伝子変異は、dominant negativeの変異であり、正常機能を有する相補遺伝子を導入しても癌形質は抑制できない。第3には、この系ではヒト1番染色体の導入による癌形質の抑制はできない。現時点で今回の実験結果の原因を特定することはできない。いずれにしろ、今後さらに例数を増やし、ヒト1番染色体の移入により癌形質の抑制が可能な肝癌細胞株の分離を目指す必要がある。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Miyagawa, K., et al.: "Mutations of the WT1 gene in childhood non-lymphoid hematological malignancies." Genes Chromosomes and Cancer. in press.
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[Publications] Hiramoto, T., et al.: "Mutations of a novel human RAD54 homologue, RAD54B, in primary cancer." Oncogene. in press.
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[Publications] Matsuda, M., et al.: "Mutations in the RAD54 recombination gene in primary cancers." Oncogene. in press.
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[Publications] Kamiya, K., et al.: "Quantitative studies of ductal versus alveolar differentiation from rat mammary clonogens." Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine. 219. 217-225 (1998)
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[Publications] Shimokado, K., et al.: "p53 gene mutation and loss of heterozygosity of chromosome II in methylcholoanthrene-induced mouse sarcomas." Japanese Journal of Cancer Research. 89(3). 269-277 (1998)