1998 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変、肝細胞癌患者の胸・腹水生成に関わるVPF/VEGFの検討とその治療応用
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10877089
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福田 善弘 京都大学, 医療技術短期大学部, 教授 (50127130)
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Keywords | 肝硬変 / 肝細胞癌(肝癌) / VEGF / VPF / 胸・腹水 / VEGFmRNA / 癌性腹膜炎 / 特発性細菌性腹膜炎 |
Research Abstract |
1. 胸・腹水、血清中のVascular Permeability Factor(VPF Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF)の測肝硬変、肝細胞癌(肝癌)及び他の癌患者より採取した胸・腹水、血清中のVPF/VEGF値を、VEGF165を定量的に測定するサンドウイッチEIA法(Quantikine TM,R&D Systems)により測定した。その結果、肝癌患者の胸・腹水中のVEGF値は対照とした癌性腹膜炎を合併している他の癌患者の胸・腹水には及ばないものの肝硬変患者のそれより有意に高値であった。血中との比較では肝硬変では血中VEGF値>胸、腹水中VEGF値を示すものが多かったが、肝癌や他の癌では血中VEGF値<胸・腹水中VEGF値を示した。 2.胸・腹水中のVEGFmRNA 肝硬変、肝癌及び他の癌患者より胸・腹水40mlを採取し遠心分離により細胞成分を得、RT-PCR法によりVEGFmRNAを検索した。その結果他の癌による癌性腹膜炎や肝癌患者腹水中VEGFmRNA陽性を認めたが、肝硬変患者腹水ではVEGFmRNAは陰性であった。なお2例の肝硬変患者が特発性細菌性腹膜炎を合併した際には腹水中VEGF値は高値を示し、VEGFmRNAは陽性に転じた。これらの結果から肝硬変患者の腹水生成にVPF/VEGFの関与は少ないと考えられるが、肝癌患者とくに進展例での腹水生成機序にはVPF/VEGFすなわち血管透過性の亢進の作用が関わっている可能性が示唆された。すなわち、これまで肝癌患者の胸・腹水生成機序は肝硬変同様、主として門脈圧亢進によるものと考えられていたが、肝癌ではむしろVPFN/VEGFが積極的に関与していることが示唆された。今後さらに胸・腹水中のVPF/NEGF産生細胞が肝癌細胞か他の細胞かを明らかにし、肝癌における難治性腹水の治療に抗VPF/VEGF抗体や血管新生阻害剤などが有用であるかを実験動物を用いて検討していきたい。
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