1998 Fiscal Year Annual Research Report
消化管運動調節障害の分子生物学的解析と治療に関する萌芽的研究
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10877090
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川野 淳 大阪大学, 医学部, 助教授 (60133138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中間 昭弘 大阪大学, 医学部・付属病院, 医員
辻井 正彦 大阪大学, 医学部, 助手 (40303937)
辻 晋吾 大阪大学, 医学部, 助手 (40301262)
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Keywords | C-Kit / マウス / 線維芽細胞 / 間質細胞 / 消化管運動 |
Research Abstract |
本研究では初年度は消化管運動障害モデルとしてc-kit欠損動物であるWs/Wsラット、WW^vマウス等を用い、その消化管運動障害の実体とこれに伴う種々の動物の形質について明らかにした。すなわちin vitroの条件下ではこれらの動物では小腸壁、胃壁の平滑筋収縮能のうち壁在神経由来の運.動に障害がみられるが、胃幽門部in vivoにおいてはこの消化管収縮の障害は特徴的な収縮棘波として表された。この運動障害は動物の生涯を通じて持続していた。また消化管運動障害のうち、胃運動については絶食時と摂食中で異なっており、wild typeの動物では絶食に伴い胃収縮回数が摂食時の2.6倍に増加するが、Ws/Wsでは絶食時の胃収縮回数は摂食時の約1/5に減少していた。このモデルの消化管運動障害は抗コリン剤、コリン作動性薬剤その他既存の消化管運動調整薬では大きく改善されることはなく、難治性消化管運動障害のモデルとして極めて有用であると考えられた。さらにこれらのモデル動物では顕著な胆汁逆流が観察され、一部の動物ではびらん、潰瘍性病変が発生した。 またこれらの動物はmast cellなど他のc-kit発現細胞も欠損している。これらの,c-kit変異動物ではfibroblastに由来する各種臓器の線維化病変の形成が抑制されると予想されていたが、予想に反しWs/Wsラットを用いた検討では線維化病変の形成が観察された。このことは本動物をモデルとして用いる際にコラーゲンならびにコラーゲン産生細胞に由来する組織収縮を考慮する必要が少ないことを示唆している。以上の結果よりこれらの動物はc-kit発現細胞のrecipientとして有用であると考えられ、細胞移植による消化管運動の変化を検討しつつある。
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[Publications] Nakama A,Kawano S,et al.: "Disturbed pyloric motility in Ws/Ws mutant rats due to deficiency of c-kit-expressing interstitial cells of Cajal." Pathology International. 48. 843-849 (1998)
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[Publications] Okazaki T,Kawano S,et al.: "Increase of mast cells in the liver and lung may be associated with but not a cause of fibrosis." Laboratory Investigation. 78. 1431-1438 (1998)