1999 Fiscal Year Annual Research Report
CTガイド下屍体ガス、造影剤注入法による腹膜外筋膜解剖の画像解析
Project/Area Number |
10877141
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
大場 覚 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (80115469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 弘和 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (20080103)
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Keywords | 腹膜外腔 / CT-解剖学的相関 / 屍体 / 腎筋膜下腔 / 腹膜外腔交通経路 / 腎周囲腔 / 腎傍腔 / 膀胱周囲腔 |
Research Abstract |
解剖実習用の屍体の種々の腹膜外腔へCTガイド下で種々の量のガス(空気)を段階的に注入し、あるものはさらに色素を混入した造影剤を注入した後、これらをX線CTで全腹部および全骨盤部を撮像し、その画像を分析して、腹膜外腔内のガスの広がる経路を検討した。 注入部位と使用した屍体は腎周囲腔2体、前腎傍腔3体、膀胱前腔2体、直腸傍腔2体、膀胱周囲腔1体で、注入ガス量は150ml〜3,000mlであった。CT像を撮像した後、いずれも剖検して、CTー解剖的相関を行った。 その結果、腹部腹膜外腔と骨盤部腹膜外腔とは容易に腎筋膜下腔にて自由にガスの交通がみられた。一側の腎周囲腔のガスは上腹部の腹部大動脈と下大動脈の前縁に沿う狭い経路を通って、他側の腎周囲腔に入り得ることが確認された。また腎周囲腔のガスは一旦前腎傍腔に出て腸間膜内い侵入することもあった。前腎傍腔と後腎傍腔は腎筋膜の下方の腎筋膜下腔、すなわち下部腰椎、上部仙椎の前面の腹膜外腔で互いに交通し、そこから対側に自由に移行し、左右の側腹部腹膜外腔を上行したり、さらに腰三角部から腹壁に移行することがみられた。この腎筋膜下腔は腹膜外腔の交通の要所であることが判明したが、これまでの文献に記載が乏しい。上方は横隔膜直下の腹膜外腔へ、あるいは縦隔へ、下方は尿性殖隔膜、前方は鼠径部から皮下へ、さらに陰嚢腔へ、前方は腸間膜内、側腹部は左右の腹膜外腔からさらに前腹壁の腹膜外腔へ交通が確認された。腹膜外腔は腹膜と腹横筋膜との潜在空間で、下腹部では腎筋膜下腔を介して上下左右に、上腹部では前腎傍腔で左右に、さらに腸間膜内にひろがり得る潜在空間と定義できる。 これらの腹膜外腔の潜在経路の検討は方法論的に解剖実習用の屍体を用いたことが、生体とやや異なるが、腹膜外腔の炎症、出血、腹膜外腔への消化管穿孔、縦隔気腫などの腹膜外腔病変の広がりを理解する上で重要な臨床解剖学的知見を付加し得たと考えられる。
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