1999 Fiscal Year Annual Research Report
凍結保存血管の移植後動脈硬化性病変に対する分子生物学的制御法の開発
Project/Area Number |
10877208
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
和田 行雄 京都府立医科大学, 医学部, 助教授 (90167213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 啓雄 京都府立医科大学, 医学部, 助手 (70275212)
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Keywords | アポトーシス / Fas-Ligand / Fas分子 / パーフォリン(perforin) / グランザイム(granzymes) / Bcl-2分子 / 血管移植 / 動脈硬化 |
Research Abstract |
(目的)凍結保存した大動脈血管の移植を行い、移植後に発症する動脈硬化性変化の発症機序を分子生物学的に解析し、その知見をもとに硬化性病変の制御法開発の可能性を探ることを目的に本研究を遂行した。ラットの大動脈を採取、凍結保存し、同種移植モデルを作成した。(我々の研究グループで既にモデルの開発は終了している。)なお、平成10年度の研究結果より、移植後の動脈硬化性病変の進展には、アポトーシス誘導分子群の活性化、特に(Fas,FasL分子)の発現量が移植後1ヶ月まで、経時的に移植血管内皮細胞に増加し、同部位のアポトーシスの促進が誘導された。しかし、同時に抑制分子群によるアポトーシス抑制が、Bcl-2分子の発現で認められ、促進と抑制の両者のバランスが保たれながら動脈硬化性病変が進展していくことが明らかとなった。そこで、平成11年度の研究では、FasL分子とBcl-2分子の組み込みアデノウイルスベクター(pFasL/Adv-1,pbcl-2/Adv-1)を作成し、BNラットの大動脈内皮細胞に接触感染させ、その大動脈を用いて同種移植実験を行った。(結果)遺伝子導入効果を確立した至適条件下に、FasLとBcL-2の両遺伝子をBNラットの大血管に導入後、LEWラットの腹部に移植したが、無処置ラットの移植大動脈と比較して、移植後1ヶ月までは、TUNNEL陽性のアポトーシス内皮細胞は減少し、動脈硬化性病変の進展は抑制されたが、3ヶ月を過ぎると大動脈壁全層に浸潤細胞の増加と繊維化を認め、また、目的遺伝子の発現量も減少していた。(以上の結果に対して論文準備中)(結論)このin vivoでの解析によって、血管内皮細胞へのFasLとBcl-2の両遺伝子の適当量の発現が、同種血管移植後の動脈硬化性病変の進展に対して抑制効果を認めることが明らかとなった。今後は、長期間の発現量の維持を目的とする新しい遺伝子導入法の開発を行っていく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 中嶋啓雄、水田成彦: "ラット血管移植"臓器移植実験マニュアル(秀潤社). 2-9. 175-178 (1999)
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[Publications] 中嶋啓雄、水田成彦: "心虚血再潅流傷害"臓器移植実験マニュアル(秀潤社). 3-1. 186-188 (1999)
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[Publications] 中嶋啓雄、岡克彦: "心筋虚血再潅流障害の発生機序の解析と新しい治療法の開発"外科治療. 80,6号. 1230-1237 (1999)