1998 Fiscal Year Annual Research Report
いわゆる「血管条性難聴」の検出法の確立 -ヒト聴神経腫瘍耳のEP測定から-
Project/Area Number |
10877266
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
小林 俊光 長崎大学, 医学部, 教授 (80133958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神田 幸彦 長崎大学, 医学部・附属病院, 助手 (20264244)
中尾 善亮 長崎大学, 医学部・附属病院, 講師 (40188884)
重野 浩一郎 長崎大学, 医学部, 助教授 (10162588)
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Keywords | 血管条性難聴 / ヒト / 聴神経腫瘍 / EP / 蝸牛内リンパ直流電位 |
Research Abstract |
(目的)難聴のある聴神経腫瘍耳において、内リンパ直流電位(EP)を測定し、それが低下している例が果たしてあるかどうか。あるとすれば、そのような症例の純音聴力、耳音響放射(OAE)、ABR、蝸電図(ECoG)の特徴はどうかを検討し、「血管条性難聴」の診断に資するデータを収集することを目的としている。 (結果) 1) 現在迄に聴神経腫瘍8耳の経迷路法による術中に蝸牛内リンパ電位(endocochlear dc potential:EP)を測定した。その実測値は57,42,50,20,64,56,23,62 mVであり、20〜64mVに分布し、平均44.5mV(n=8)であった。 2) 腫瘍径との相関:腫瘍径が1cm以下の4耳のEPはそれぞれ62,20,56,64mV(平均50mV:サイズ0.3,0.4,0.6,0.9cm)であり、これを超える4耳が50,23,57,42mV(平均43mV:サイズ1.4,2.0,2.7,2.8cm)であった。 3) 平均純音聴力閾値との関係:平均純音聴力閾値が65dB未満(4耳の平均46dB)の4耳におけるEPの平均値は47mV、65dB以上(4耳の平均57.8dB)では46.5mVであった。 4) 8kHz聴力との関係:8kHzの純音閾値がスケールアウトの4耳のEP値の平均は45.8mV、それ以外(4耳の平均83.8dB)の4耳のEP値の平均は47.8mVであった。 (考察) 1) EP測定を行った耳でこれが0mVの例はなかったことから、聴神経腫瘍では高度難聴耳にあっても蝸牛の血流が完全に遮断されている例は少ないと考えられた。2)EP値と平均純音聴力閾値、8kHz純音聴力閾値のいずれとの間にも相関を認めなかった。3)腫瘍径が大きい方がEP値が小さい傾向がみられたが、症例が少ないことから有意差はない。4)同程度の純音聴力でありながらEP値に差がみられた。これはEPが低い例は蝸牛血管条障害の程度が大きい耳と考えられるかもしれない。しかし、測定アーチファクトも考慮に入れる必要がある。
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