1998 Fiscal Year Annual Research Report
反復性中耳炎に対するインフルエンザ菌外膜蛋白粘膜ワクチンの開発
Project/Area Number |
10877267
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
山中 昇 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10136963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 匡人 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80205658)
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Keywords | 中耳炎 / インフルエンザ菌 / 粘膜ワクチン / P6蛋白 |
Research Abstract |
1) 中耳腔における起炎菌の分子生物学的検索 中耳炎の反復は炎症の再燃あるいは再発によって起こる。中耳炎は経耳管的に鼻咽腔の細菌が感染することによって発症する場合がもっとも多いと考えられている。本来無菌的な中耳粘膜において、中耳炎罹患患児ではどの程度の期間細菌ゲノムが存在するのか検討を行う。すなわち、インフルエンザ菌(NTHI)、肺炎球菌(SP)、カタラーリス菌(MC)の外膜蛋白をコードするシークエンスからプライマーを作製し、中耳貯留液中、中耳粘膜内のインフルエンザ菌、肺炎球菌、およびカタラーリス菌をPCR法により検出した。 10例、18貯留液の細菌学的検討では、培養にて2検体が陽性であったが、PCR検索ではNTHIが16/18(84.4%)に認められ、さらにSP,7/18(39%),MC,7/18(39%)と細菌ゲノムが検出された。すなわち通常の培養で検出されないにもかかわらず、高率に起炎菌DNAゲノムが認められ、中耳腔における細菌処理が不十分なことが推測された。 2) nontypableインフルエンザ菌の外膜蛋白およびP6蛋白の抽出 P6蛋白の抽出はMunson&Granoffの方法を用いた。すなわちP6が緩衝液B(1%SDS-0.1MTris-0.5MNaCl-0.1%βmercaptoethanol,pH8.0)に対して不溶性であることを利用したものである。先ず中耳貯留液から分離したインフルエンザ菌から上記の方法で、外膜蛋白とリポオリゴ糖からなる外膜複合体を抽出し、次にこの複合体を緩衝液Bに溶解し37℃で30分培養後超音波処理を行った。21,000Gで30分遠沈後、沈渣を緩衝液Bおよびリボヌクレアーゼに溶解する。以上の操作を3回繰り返し、沈渣を硼酸緩衝液(pH9.5)に溶解し65℃、30分熱処理した。不溶物質を10万G、1時間の遠沈により除去し、上清中にP6蛋白を得た。電気泳動にて分子量16,000の付近に単一のバンドが得られ、その純度および再現性が確認できた。 3) 健康対照児および中耳炎患児の血清中および中耳貯留液、鼻咽腔洗浄液中のP6特異的抗体の検索 抗P6-固相ELISAにより抗P6抗体を測定した。健康対照群における検索では、円に対する血清抗体は殆どがlgGであり、lgGサブクラスの検索では、P6に対する抗体活性はlgG1およびlgG3に認められ、lgG2およびIgG4分画にはほとんど特異的抗体活性は認められなかった。鼻咽腔洗浄液ではP6特異的分泌型lgA抗体が検出された。反復性中耳炎患児では、P6特異的抗体の年齢に伴う上昇が対照群に比較して有意に不良であり、P6蛋白に対する免疫不全の存在が示唆された。さらにlgGサブクラスの検索ではlgG3抗体の上昇が不良であった。 以上より、本年度の研究では、中耳炎予防ワクチンの開発において、インフルエンザ菌の外膜蛋白のうち、P6が有望であり、粘膜におけるlgAおよび血清中でのlgGの上昇を誘導する投与法を検討する必要があることが判明した。
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Research Products
(1 results)