Research Abstract |
1.70名の患者を対象に鋳造鉤の輝度の測定,口腔内診査,唾液の性状,う蝕原性細菌(Lactobacillus,Streptococcus mutansグループ)および舌表面と義歯床基底面のCandida属の検出,舌苔のVSC(H_2S,CH_3SH)産生量の測定(45名)を行った.また被験者の鋳造鉤をEPMAを用いて定性および面分析を行うとともに,SE,COMPO像の撮影を行った. 1)輝度は21〜1945cd/m^2の間に分布し,平均は293.2±383.1cd/m^2であった.「高度の変色」と評価した輝度80cd/m^2以下は28名(40.0%)であった. 2)輝度80cd/m^2以下と81cd/m^2以上の2群で口腔微生物叢,唾液の性状,VSCと変色との関係を比較したところ,有意差が認められたのは各因子の中でCH_3SH産生量,CH_3SH+H_2S産生量のみであった. 3)定性分析の結果,Au,Pd,Ag,Cu,Zn,In,C,O,P,Ca,Sが検出された. 4)変色の大きい鋳造鉤ほど表面の凹凸が顕著で,線分析でもSの明瞭なピークが認められた. 本研究において検索した各因子の中で,CH_3SHやH_2S産生量は金銀パラジウム合金の変色と大きな関連があり,特にCH_3SH産生量の多い被験者は変色を生じる可能性が大きいことが示唆された. 2.CH_3SH,H_2Sを産生するFusobacterium nucleatum,う蝕原性細菌のStreptococcus mutansグループを選択し,変色に対するこれらの細菌の影響を検討した.その結果,Fusobacterium nucleatumを培養した中に入れた試料が最も色差ΔE*abが大きく,変色との関連性が示唆された. 3.金銀パラジウム合金による鋳造鉤について,熱処理の効果を検討した.その結果,800℃1時間熱処理後急冷した鋳造鉤は,熱処理を行わなかったもの,熱処理後空冷したものよりも6カ月,1年後の輝度は高く,統計的有意差が認められた.
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