食塊に生じる動的な咬合応力を探る-テクスチャーの差異が歯根膜内の機械受容器に及ぼす影響-

1998 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10877335
• Research Institution: Tokyo Medical and Dental University
• Principal Investigator: 篠崎 直樹 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (90292979)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 久野 昌隆 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (80282763) ; 石田 哲也 東京医科歯科大学, 歯学部, 講師 (80211043) ; 相馬 邦道 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (10014200)
• Keywords: 咬合応力 / 動的測定 / 食塊 / テクスチャー / 機械受容器 / 咀嚼 / 歯の変位

Research Abstract

本研究の目的は、咀嚼時に食塊に生ずる咬合応力を詳細に捉えること、またその反力としての歯根膜内の応力分布を推定し、歯根膜感覚と顎口腔系機能制御の関連性を解明、検討することにある。本年度は従来型の食塊を想定した咬台力センサーに改良を加え、硬さの異なるセンサーを噛みしめた時に歯からセンサーに対して加わる力の変化を検討した。咀嚼時に歯は食塊から力を受け微小に変位する。歯の変位は歯や歯槽骨の材料特性や歯を支える歯根膜の粘弾性に依存した物理的現象と捉えることができるが、食塊の硬さの違いにより、その動きに差違が存在することが予測される。また、この歯の変位の違いが歯根膜内の応力勾配の差を生み出し、mechano-reseptorに対して異なる刺激となり、このmechano-reseptorからの指令は硬さの異なる食塊に対して効率よく力が加わるように下顎の動きを制御していると考えられている。
本年度は、上記の考えのもとに、硬さの異なるゴム素材を3種類用意し、センサーの被膜として用いた。すなわち、合成ゴム、天然ゴム、餅ゴムをセンサーの上下両面に配置し、被験者に対して同一の咬合力を加えさせたときの歯から咬合力センサーに対して加わる力を測定し、特に第一大臼歯に加わる力に関して解析を加えた。その結果、ゴム素材の硬さの違いに対応して、各咬頭に加わる力に違いがみられた。すなわち、ゴムの硬さが柔らかい時は舌側咬頭から加わる力が大きかったが、ゴムの硬さが硬くなるにつれて頬側咬頭から加わる力が大きくなる傾向がみられた。本結果から咀嚼する対象によって、歯は異なる動きを示していることが示唆された。本年度は歯の変位を頬舌的なモーメントを含めて測定することを予定しており、歯の咬合面に加わる力と、歯の変位の結果をもとにして、歯根膜内に分布する咬合応力の分布状態を把握する予定である。