1998 Fiscal Year Annual Research Report
細胞のストレス応答に関与する新規脂質性メディエーターの解析
Project/Area Number |
10877375
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 哲幸 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (50178323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室伏 きみ子 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (00103557)
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Keywords | ストレス応答 / ストレスタンパク質 / HSP / 脂質性メディエーター / ステリルグルコシド / コレステロール / ポリフェラステロール / ステロール配糖体 |
Research Abstract |
近年、ストレスタンパク質(HSP)が熱ショックをはじめ、酸化ストレス、重金属、紫外線などさまざまな環境ストレスによって誘導され、細胞の防御機構において重要な役割を演じていることが明らかとなっている。しかし、細胞がストレスを感受し、HSPが誘導されるまでにどのような生体内分子が実際に機能しているのか、ほとんど明らかにされていない。本研究では、細胞外ストレスを最初に受容するであろう細胞膜とその成分変化に注目し、ストレス応答に関与する新規の脂質性メディエーターが存在する可能性を探った。 以前の研究で、真性粘菌(Physarum polycepharum)に熱ショックを与えると、ステロール配糖体の一種であるポリフェラステリルグルコシドが速やかに合成誘導されることが見出された。今回、この現象が生物に普遍的であるかを確かめるため、ヒト由来の培養繊維芽細胞株であるTIG-3細胞を用いて解析した。その結果、TIG-3細胞においても熱ストレスにより、ある種のステロール配糖体がHSPの誘導に先立って速やかに誘導された。このステロール配糖体を単離精製後、ガスクロマトグラフィーやエレクトロスプレー型質量分析法などを用いて構造決定した結果、コレステリルグルコシドと同定された。また、その合成に関わる酵素活性についても予試験的に検出することができた。高等動物細胞において、この種の反応が起こることはこれまでに報告されておらず、新しい知見である。 以上、ヒト繊維芽細胞においてもステリルグルコシドが細胞のストレス応答の初期において誘導されることが示された。現在、この生体分子の機能について、その代謝・動態とHSPの誘導活性などの観点から、解析を進行中である。
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Research Products
(1 results)