1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10878102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 孝彦 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (80280949)
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Keywords | ヘマンジオブラスト / 造血発生 / 神経ガイダンス / AGM領域 |
Research Abstract |
造血発生部位であるマウス胎仔AGM領域より樹立したオンコスタチン依存性細胞株LOは、血管内皮細胞様の特徴を有し、同時に血球を自発的に産む。これは、血球と血管系の発生が共通の前駆細胞へマンジオブラストから始まるという考えを支持する。本研究ではこのLO細胞の性状分析を、表面抗原に対するモノクローナル抗体の作製と発現クローニング、および酵母によるシグナルトラップクローニング法により行なった。その結果、小脳ニューロン膜蛋白質M6a、EPH受容体A4、SemaphorinEの発現を同定した。EPHとSemaphorinEとそれらに対するリガンドは、AGM領域で確かに発現しており、予想に反して造血前駆細胞にも発現が観察された。それらの分子はこれまでの解析で、ニューロン軸索誘導と反発をガイドすることがわかっていたが、造血系に対する生理作用は報告がない。神経系と異なり、血球細胞は浮遊して血流にのって移動するため、基本的には位置情報のセンサーと呼応遺伝子が存在しないと考えられてきた。しかし、造血発生を考えた場合、ヘマンジオブラストの発生は時期・場所特異的であり、また、一度AGM領域で発した造血前駆細胞はすぐに肝臓に移行し、さらに出生前に骨髄に移行する。本研究によれば、AGM領域の造血幹細胞が骨髄に定着するには一度肝臓の環境を通過することが必須であることが判明した。従って、ヘマンジオブラストからの血球新生過程や、その後の移動過程いずれかで、微小環境内のガイダンスを受けるステージがあることが示唆される。さらに、本研究では、新規膜蛋白質B61をクローニングした。B61はDrosophilaのToll受容体などに見られるロイシンリッチリピートを有する膜蛋白質で、やはり中枢神経系で構造的に類似した蛋白質の発現が報告されている。
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[Publications] K.Kitajima,et al.: "Definitive but not primitive hematopoiesis is impaired in jumonji.mutant mice." Blood. 93. 87-95 (1999)
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[Publications] M.Tanaka,T.Hara,et al.: "Reconstitution of the functional mouse oncostatin M(OSM)receptor." Blood. 93. 804-815 (1999)