2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランシウム電気双極子能率の相対論的多体理論計算による標準模型を超える物理の研究
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10F00023
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
酒見 泰寛 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HULIYARSUBBAIAH Nataraj 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 外国人特別研究員
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Keywords | 電気双極子能率 / フランシウム / 相対論的結合クラスター模型 / 時間反転対称性 / CP非保存 / 超対称性 |
Research Abstract |
基本粒子における電気双極子能率(EDM)の存在は、時間反転対称性の破れを意味し、CPT不変性を考慮すると、これはCP非保存を意味する。標準模型では、電子EDMの寄与は極めて小さく、標準模型を超える現象を探索するのに有力な観測量である。アルカリ原子のように、最外殻に1個の不対電子をもつシンプルな原子構造をもつ元素では、相対論効果により、電子EDMが増幅されることが示唆されており、特に、最大の原子量をもつアルカリ原子・フランシウム(Fr)では、最大の増幅度を持つため、電子EDM探索を行う上で、きわめて重要な元素となる。原子EDMの観測値から、電子EDMの値を高精度で抽出するためには、その増幅度の高精度計算が必要である。我々は、相対論的結合クラスター模型において、原子系における電子間の電磁相互作用による相関までとりいれた第一原理計算手法を確立し、今年度は、任意の次数まで、EDMの増幅度、極性分子における内部有効電場、超微細構造定数等、原子の基底状態および励起状態の様々な物理量を計算するコード開発を行った。特にスーパーコンピュータでの高速計算に適合したコードの最適化を進め、FrのEDM増幅度の精度をさらに向上させるとともに、同じ手法により、Xe原子の準安定状態における電子EDMの増幅度をはじめて計算を行った。さらに極性分子・YbFの基底状態における有効電場の計算を進め、極性分子における電子EDMの増幅度に関して議論を深めた。他の研究グループとの計算値の違いに関して、詳細な検討を進め、その結果、軌道電子が感じるクーロンポテンシャルの取り方が、その要因であることを確認した。今後、どのポテンシャルを用いるか、他の研究グループとも議論を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FrのEDM増幅度の高精度理論計算手法を確立し、世界最高精度での増幅度の計算を完遂することが本研究の目的である。Frは、アルカリ原子の中で最大の原子量をもつ元素であり、その基底状態・励起状態の物理量を計算するには、多くの電子配位を考慮した大規模計算が必要になる。本研究では、電子間のクーロン力による相関をとりいれた第一原理計算手法を開発し、Rb,Cs,T1および分子に至るまで、様々な多体系の物理量の計算を行って、その計算結果の信頼性を確かめることができた。したがって、大規模計算に向けた準備が、完了したこととなり、予定通り、順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
FrのEDMの増幅度の高精度理論計算を完遂することが、本研究の目標であるが、これまで、相対論的結合クラスター計算手法を開発し、様々な原子・分子の基底・励起状態の物理量を計算し、実験結果や、他の理論誹算との比較を行い、計算結果の信頼性を確認してきた。これらの結果をふまえて、今後、スーパーコンピューターを用いた大規模計算を進める予定であり、研究期間内に世界最高精度の電子EDM増幅度の計算結果を得ることが可能と思われる。
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Research Products
(7 results)