2010 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキタス金属触媒による炭素-水素結合の選択的活性化を鍵とする新規合成反応の開発
Project/Area Number |
10F00033
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 栄一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZENG Xiaoming 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 鉄触媒 / 炭素水素結合活性化 / 反応機構 / 銅触媒 / 付加反応 / 環化反応 / インデン合成 / 芳香族スルフォン酸クロリド |
Research Abstract |
環境・資源・エネルギー問題の解決に向けて,これまで希少元素材料に依存してきた技術のユビキタス元素による代替は,現在の科学技術における喫緊の課題となっている.本研究室は,従来パラジウム,ロジウムといった貴金属触媒を用いて行われてきたアリールピリジンおよびイミン類の直接アリール化反応を低毒性ユビキタス鉄触媒を用いて実現できたが,この反応の反応機構に関する情報は全く得られなかった.Zeng氏はジイミンリガンドにより安定化された鉄(0)錯体を合成し,これを用いてアリールピリジンのオルト位の炭素水素結合活性化に成功しており,触媒反応にも同様な鉄活性種が生成されていることが示唆された.現在,この鉄(0)錯体の触媒反応への応用を検討中である. 以前開発した金属触媒を用いた炭素-水素結合活性化反応の一つの欠点として,過剰量の不安定な有機金属試薬を使う必要があった.Zeng氏は鉄触媒を用いて,市販の安定な芳香族スルフォン酸クロリドの末端アルキンへの付加反応を開発した.この反応は高い位置および立体選択性と良好な収率で進行し,多置換オレフィンの合成に応用が可能である. また,芳香族スルフォン酸クロリドの末端アルキンへの付加に引き続く炭素-水素結合活性化を経る環化反応を設計し,有機半導体として注目を集めているインデン誘導体合成に成功した.この反応は銅触媒を用いて高収率および高官能基許容性で進行する.現在,この反応を利用した機能性化合物の合成およびその物性を検討中である.
|