2010 Fiscal Year Annual Research Report
へテロバッキーボウルおよびキラルバッキーボウルの合成研究
Project/Area Number |
10F00035
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
櫻井 英博 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TAN Qitao 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 外国人特別研究員
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Keywords | バッキーボウル / ヘテラバッキーボウル / スマネン / アザスマネン / ボウル反転 / ボウルキラリティ |
Research Abstract |
本研究は、おわん型共役化合物「バッキーボウル」の電子移動特性制御に関連した、バッキーボウルのキラリティの制御や、骨格の一部の炭素原子を窒素原子等のヘテロ原子に置換したようなヘテラバッキーボウルの合成、特にボウルキラリティを有するC_3対称ヘテラバッキーボウルとその誘導体に焦点を絞り、その世界初合成と、電子輸送能を含めた物性評価を行うことを目的としている。 今年度では、スマネン骨格の外郭6員環に窒素原子をC_3対称で導入したトリアザスマネンの合成に成功した。これは世界で初めての含窒素ヘテラバッキーボウルである。これまでの研究で合成されていたラクタム部位を有するバッキーボウル骨格誘導体より、芳香族(複素環)化合物であるトリアザスマネンへの変換に成功した。すなわち、トリアミド化合物をトリチオアミドに変換した後、メチル化、芳香化によってメチルチオ基が置換したトリアザスマネン、さらに酸化によってスルホンが置換したトリアザスマネンへと誘導した。X線結晶構造解析の結果、トリアザスマネンは対応するスマネンよりも更に深いボウル構造であることが確認できた。例えば、ボウルの深さはスマネンが1.11Åであるのに対し、トリアザスマネンは1.29Å、また最大曲率はスマネンのPOAV値が9.0°であったのに対し、トリアザスマネンは10.8゜と、フラーレンC_<60>(11.6゜)に匹敵する値を示した。そのため、ボウル反転エネルギーは非常に高く、計算値では41.5kcal/mol程度と推定されていたが,今回実測したところ、42.2±0.5kcal/molと、同様な値を示した。
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