Research Abstract |
温度に応答して,界面活性/不活性の転移,またはミセル/ユニマーの転移を示す系の構築を目指した.カチオン性の親水鎖を有し,第2ブロックが,温度に応答して(臨界温度34℃附近)低温では親水性,高温では,疎水性として振る舞うポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAm)からなるジブロックコポリマーをRAFT法により合成した.このポリマーは,室温(25℃附近)では,容易に水に溶解し,透明な溶液となった.光散乱測定や蛍光分光測定により,溶液内にはミセルは存在せず,分子はバラバラに溶解していることが確認できた.また,表面張力測定と起泡性の観察から,この温度では,界面活性であることを確認した.これは,PNIPAmそのものが界面活性であることに起因すると考えられる.溶液温度を44℃附近まで上げると,青みがかった溶液となり,ミセルの存在が確認された.さらに,この温度では,界面不活性となることを確認した.温度変化により,イオン鎖部分は何ら変化せず,PNIPAMが親水鎖から疎水鎖に転移したことにより,界面活性から不活性へ転移が達成された.この現象は,鏡像電荷効果が主因ではあるが,それだけでは,不十分であり,「安定な」ミセルを形成することが,気水界面に吸着しない界面不活性性発現に寄与していることを意味している.界面不活性性は,高分子のみの特性であり,低分子系では見いだされていないが,これは高分子系では電荷の数が多く,鏡像電荷効果が強いことに加え,高分子ミセルが極めて安定であることも重要な因子であることを示唆している. さらに,薬物輸送・放出システムへの応用の為,蛍光プローブを用いて,高分子ミセルコア内部の極性とミクロな粘度特性を定量的に評価した.今後,これらの特性と薬物の包含・放出特性の相関を探る予定である.さらには,光による制御もめざし,現在,分子設計と合成法の検討を行っている.
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