2011 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブ膜を利用した高効率分子抽出・分離技術の開発
Project/Area Number |
10F00064
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 茂夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CANNON J.J. 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | カーボンナノチューブ / 分子抽出・分離膜 / 浸透流 / 分子動力学法 / モンテカルロ法 |
Research Abstract |
昨年度に引き続いて,単層カーボンナノチューブ膜を用いた高い分子抽出・分離デバイスの開発を目指し,主に解析的研究を行った.海水淡水化技術への応用を念頭に,カーボンナノチューブ膜により生じる浸透圧力勾配のイオン半径,水和性,ナノチューブ径への依存性をさらに詳細に検証した.その結果,カーボンナノチューブ膜のように効率的に水を輸送する膜においては,膜内の圧力損失よりも流出入口の界面における流動抵抗の方が強く影響し得ることがわかった.これは,特に浸透圧力勾配を流出口付近の分子構造に相関が見られることから,膜の溶液に対する濡れ性や結合半径等を工夫することによって,輸送効率や分離効率を調整できる可能性が示された. 一方で,カーボンナノチューブ膜を用いたガス分離技術の開発を念頭に,気体分子のカーボンナノチューブへの吸着現象の解析も進めた.特に,これまで報告例が少ないカーボンナノチューブ束を対象とすることで,より実際のカーボンナノチューブ膜試料に近い系での計算を実践した.グランドカノニカルモンテカルロ法計算によって,分子量の異なる様々なアルカンのカーボンナノチューブ束への吸着量を計算した結果,カーボンナノチューブ束の表面に存在する異なる吸着サイトへの吸着量の温度・圧力依存性がアルカンによって明確に異なることがわかった.これを発展させて,異なるアルカンの混合ガスの吸着計算を行うことで,温度や圧力に依存して吸着されるアルカンに選択性が生じることを明らかにした.従って,温度や圧力をサイクルさせることによって,カーボンナノチューブ膜のガス分離への応用の可能性が示された.さらに,得られた各アルカンの数値解析結果をそれぞれ適切な吸着モデルで表現し,それを基に混合系の吸着量を予測することにも成功し,簡易的なモデルを用いて分離性能を予測するツールの開発も進めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に関する研究に関しては非常に順調に進んでおり,液体の浸透圧に関する成果は論文(Journal of Physical Chemistry B 2012, 116, 4206-4211)として発表し,ガス吸着に関する成果は同国際誌へ投稿済みである.これらで得た知見を如何に実験に繋げていくかが今後の課題となる.
|
Strategy for Future Research Activity |
解析に関してはこれまで通り進めながら,当初の計画通り,液体の駆動メカニズムをいくつか試行し,新たな分離技術への道筋をつけることを目指す.また,実験との繋がりに関しては他の研究者と協力することも検討しながら進めて行く.
|
Research Products
(2 results)