2010 Fiscal Year Annual Research Report
作物の耐湿性向上に関わる根の酸素漏洩バリア形成の機構解明
Project/Area Number |
10F00095
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中園 幹生 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KOTULA Lukasz 名古屋大学, 生命農学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | Hordeum marinum / 耐湿性 / Radial O_2 Lossバリア |
Research Abstract |
畑作物では通気組織はできるものの、Radial O_2 Loss (ROL)バリアが形成されないために、酸素の大部分が根の基部から土壌へと漏洩してしまい、根端が酸欠になることが湿害発生の原因となる。ROLバリアとは、根の基部からの酸素漏洩を防ぐバリアのことで、通気組織を介した酸素輸送過程での酸素損失を最小限に抑えて根端まで効率的に酸素を供給する役割を担っている。本研究の材料であるHordeum marinumやイネは畑作物と異なり、通気組織のほかにROLバリアを形成できるために、根端まで効率よく酸素を運ぶことにより過湿環境に適応することができる。 今年度は、Hordeum marinumの根の横断切片を作製し、組織染色をすることで、低酸素処理後のスベリンの蓄積パターンとROLバリアの形成パターンの比較を行った。その結果、スベリンの蓄積パターンとROLバリアの形成パターンはよく一致していることが明らかになった。他の植物において、根を酢酸などの有機酸の溶液で処理すると、ROLバリアが形成されることが明らかになっていたので、Hordeum marinumにおいて確認することにした。その結果、Hordeum marinumの根においても、低酸素処理をしていないにも関わらず、有機酸処理によってROLバリアの形成が観察された。この発見は、ROLバリアの形成機構を解明する上で重要な発見と言える。平成24年度には、これらの条件でHordeum marinumの根を処理することによって、ROLバリア形成過程で特異的に発現する遺伝子の同定を試みる。
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