2011 Fiscal Year Annual Research Report
ブリルアン散乱測定による下部マントル鉱物の弾性波測度決定
Project/Area Number |
10F00334
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
廣瀬 敬 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DAI Lidong 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 下部マントル / 超高圧 / ダイヤモンドセル / 弾性波速度 / ブリルアン散乱 / Al相 |
Research Abstract |
地震学による観測結果を用いて、地球内部の姿やダイナミクスを理解するには、地球内部物質の弾性波速度に関する理解がきわめて重要である。近年、高圧鉱物の弾性は理論計算によってさかんに研究されるようになった一方、実験的研究は十分ではない。そこで本研究は、ダイヤモンドセル中に封入された下部マントル鉱物の弾性波速度を、ブリルアン散乱法を用いて高圧下で測定することを目的としている。今年度、NAL相と呼ばれるAlに富む相とCa-ferrite(CF)型のAl相の2つの測定を行った。これらは下部マントルへ沈み込んだ玄武岩質海洋地殻物質中の主要構成鉱物であり、下部マントルにおけるかこう岩質地殻物質中の重要な鉱物である可能性もある。両者の組成はともに、40%NaAlSiO_4-60%MgAl_2O_4とし、同じ化学組成・異なる結晶構造での速度の違いをみることにした。最近の研究により、この組成のNAL相は1850ケルビンのとき、およそ40万気圧でCF相へ相転移することがわかっている。今回、前者については40万気圧まで、後者については74万気圧までの実験に成功し、NAL相・CF相ともに、十分に多くの高圧下における横波速度データを取得した。その結果、約40万気圧における相転移の際、横波速度が2%程度上昇することがわかった。このことは今回の実験で初めてあきらかにされた成果である。40万気圧に相当する深さ約1000kmのマントル中では、すでに地震学的観測によって異常が報告されており、今回の実験結果によって、それらが沈み込んだ地殻物質由来である可能性があきらかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの下部マントル鉱物の測定をすでに終了し、成果を現在論文にまとめているところである。さらに、より複雑な化学組成を持つ天然の地殻物質中に含まれるとされる、NAL相・CF相の測定を現在遂行中である。実験は夏までに終了する予定である
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Strategy for Future Research Activity |
測定は高圧/室温で行っているが、高圧/高温下の測定が望まれる。それにはレーザーで加熱中にブリルアン散乱スペクトルを収集する必要がある。
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