2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10F00338
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菊地 和也 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DHARA Koushik 大阪大学, 大学院・工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | レシオ変化型蛍光プローブ / 亜鉛イオン |
Research Abstract |
遊離の亜鉛イオンは、中枢神経機能や免疫機能に関わっていることが示唆されており、亜鉛イオンの生理機能に関して大きな注目が集められている。本研究では、細胞内亜鉛イオン濃度の変動を検出することを目的として、レシオ変化型蛍光プローブの開発に取り組んだ。レシオ変化型蛍光プローブでは、二波長の蛍光の比(レシオ)を測定することで、細胞内のプローブの濃度変化や細胞の厚みの違いなどが与える蛍光アウトプットへの影響を少なくすることができる。 前年度までに、亜鉛イオン結合部位であるジピコリルアミンもしくはN,N-ジピコリルエチレンジアミンを、基本骨格である7-ヒドロキシクマリンの8位に導入したプローブの合成が完了している。このプローブでは、クマリンの7位のヒドロキシル基が亜鉛イオンに配位し、クマリンの蛍光特性が変化すると期待される。亜鉛イオンの添加により吸収および励起スペクトルのレッドシフトが観測された。一方、このプローブは明確な等蛍光点を有していないため、レシオ測定を行うことは困難であった。そこで、クマリンの6位に電子吸引性のクロロ基を導入することで、7位のヒドロキシル基のpK_aを減少さたプローブの設計を行った。このプローブでは、亜鉛イオンとの結合により、スペクトルのブルーシフトが起こると期待した。期待された通り、亜鉛イオンの添加によりスペクトルのブルーシフトが観測された。また、励起スペクトル上で等蛍光点を約390nmに有しているため、この前後の波長で測定を行うことでレシオ測定が可能であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった亜鉛イオンとの結合によって、レシオ変化を誘起する蛍光プローブを開発しているため、計画通りに進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回開発したプローブは、波長変化が6nmと短いため、より大きくスペクトル変化を引き起こすプローブの開発を行う。具体的には、亜鉛イオンとの配位に関わる部位(キレーター)の構造を改変したプローブの設計を行う。キレーターの構造を変えることで金属に対する親和性・選択性を変化させるだけではなく、キレーター周辺に存在するヒドロキシル基のpK_aも変化すると期待した。新規の亜鉛イオンキレーターとしては、N,N-dipicolylethylenediamineを選択し、合成を行い、各種分光測定や生細胞イメージングへと展開する。
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