2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10F00339
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷村 吉隆 京都大学, 理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PACKWOOD DanielM. 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 非ガウス過程 / ポアソーン分布 / 高次モーメント / 久保振動子 |
Research Abstract |
本年度は系のデコヒーレンスについて、確率過程的モデルを用いて研究を行った。デコヒーレンスとは重なりあっている系の量子状態のコヒーレンスが、それぞれの時間発展が異なるために、時間とともに失われる様のことをいう。調べた結果、連続時間のランダムウォーク過程について、厳密解を発見した。以前の研究で知らている解は2つしかなく、この厳密解の導出は大変重要と思われる。連続時間のランダムウォーク過程を用いて結晶中電子のスピンのデコヒーレンスについて研究した。結果を用いて、燐の不対電子とシリコン29の核がどのように相互作用するかを決定する方法に提案した。この方法は一番最初推定する方法である。さらに、この解で、非線形スペクトルを計算した。調和振動子にモデルの解に適用して、非ガウシアン的な環境に対するスペクトルを計算した。この結果は、実験的に非ガウシアンの影響を調べるのに役立つ。非ガウシアン的な揺動の効果は水や光合成の実験において重要であると考えられる。これらの結果は現在論文としてまとめている。 さらに非平衡気体に対するモデルについての研究を行った。2種類の気体分子が衝突により平衡状態になることを考える。非平衡状態の気体を説明するモデルが多いが、本モデルは二つの重要な特徴がある。1つ目は衝突により平衡に入る様が詳細に記述される。他のモデル(例えば、ブラウン運動モデル)は、その機構が詳しく説明されておらず、平均により平衡に入る仕組みになっている。2つ目は、モデルがボルツマン方程式の確率的な表現になっていることである。モデルは比較的簡単に扱えるので、統計力学の研究者には便利なモデルと思われる。このモデルに対して数学的な研究を行い、色々な定理を証明した。例えば、ある条件でブラウン運動に収束することなどである。さらに、高い運動エネルギーの状態に入る周波数が早くなることも証明した。この定理で、平衡に入る機構の新しい洞察を行った。この洞察は他の平均的モデルを補完する。現在この研究の結果を論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた光合成系の研究は進捗していないが、他の非ガウス系の研究が大きく進展しており、この遅れを十分補うものであると思われる。
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Research Products
(3 results)