2011 Fiscal Year Annual Research Report
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10F00341
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
速水 真也 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE Younghoon 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ソフトマテリアル / 柔軟性金属錯体 / 金属錯体液晶 / 強誘電性 / スピン転移 / 混合原子価 |
Research Abstract |
これまで動的電子状態(スピンクロスオーバー、磁性体、原子価異性、混合原子価など)の双安定性を利用した機能発現という研究が盛んに行われている。光誘起スピン転移(LIESST)化合物は、光スイッチング分子の一つとして知られており、強い分子間相互作用(π-πスタッキング)を導入することで、協同効果を大きくし、現在まで不可能とされてきた鉄(III)錯体などで初めて光スイッチング機能を発現することに成功した。一方、フレキシブルな系では今までに例を見ない機能発現および材料開発が行える可能性がある。例えば生体内においてタンパク質は活性中心の周囲にアミノ酸の連結による柔軟な場を形成しており、この空間が特異的な触媒機能の発現の鍵となっている。また、液晶材料やゲル材料あるいは薄膜材においても、その物性発現において構築素子が形成する柔軟な場が重要である。さらにデンドリマーなどの研究においては赤外吸収によるエネルギー変換においても柔軟な場が必要不可欠である。 そこで本研究課題において、長鎖アルキル鎖を導入した金属錯体を合成し、柔軟な場を構築することにより、従来まで発現できなかった金属錯体の機能発現の創製を目指した。ここで長鎖アルキル鎖によって形成された柔軟な配列ナノ空間場に動的電子状態特性(スピンクロスオーバー・原子価異性・磁性体・混合原子価状態など)を有する金属錯体を置くことによって、長鎖アルキル鎖の熱的揺らぎや振動などが中心金属錯体の動的電子状態に作用し新たな物性発現を観測することを目指すことを目的として研究を行った。 ここで得られた結果は、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は長鎖アルキル鎖を導入した柔軟な金属錯体を構築し、柔軟な場を創製することにより、従来まで発現できなかった金属錯体の機能発現を目指すものであり、柔軟な金属錯体の電場によるスピン状態転移および強誘電性の発現を目的とした。本研究結果として、電場に依存したスピン転移は観測されていないが、液晶相転移によるスピン転移挙動などの観測に成功しており、ほぼ目的を達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
金属錯体は一般的に絶縁体の化合物が多く存在し、強誘電体を構築する上で非常にアドバンテージが多い物質群であるが、現在まで金属錯体で強誘電性が報告された例は配位高分子化合物の数例のみである。また強誘電性液晶は、液晶材料にキラル源の導入や構造的に折れ曲がった構造を有しているものなど非常に複雑で扱いにくいものが多い。また金属錯体液晶においても現在までいくつかの強誘電性の発現において、キラル源の導入における強誘電性の発現のみであり強誘電性を発現させるためにはキラル源の導入あるいはベント構造を有するものが不可欠であった。しかしながら本研究提案では、キラル源やベント構造などは必要としない中心金属錯体における動的電子状態に起源をもつ強誘電性を発現する金属錯体液晶の構築を目指す。
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