2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10F00344
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
碇屋 隆雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DUB PAVEL 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 選択的合成・反応 / 錯体・有機金属触媒 / 不斉合成・反応 / 触媒設計・反応 |
Research Abstract |
1)協奏機能触媒の概念に基づいて新規に合成したフッ素置換のスルホニル基を有するDPEN配位子をもつルテニウムおよびイリジウムのキラルアミド錯体が水やアンモニア等反応して、それら分子を取り込んだ新たなアミン錯体を与えることを見いだした。塩基性を有するアミド錯体が水やアンモニアと反応して、OHあるいはN-H結合の切断をともなってヒドロキシーあるいはアミノ-アミン錯体を与え、ついで分子内にある炭素-フッ素結合を活性化しつつ、酸素や窒素を含む環状錯体を収率良く与える。結果として水やアンモニアが活性化され基質に取り込まれた錯体へと変換された。本反応は量論的ではあるものの、水やアンモニアの固定化につながる新たな知見である。さらに、アンモニア以外に、さまざまなアミン化合物も同様に反応し環状化合物を与えることも分かった。 得られた窒素を含む環状化合物は、酸との反応により金属-窒素結合が切断され新たなアミノ基をもつアミン錯体を与えた。これらの新規アミン錯体は、ケトン類の水素化触媒として機能することも明らかとなった。 2)キラルアミド触媒による不斉マイケル付加反応における反応条件の最適化を行うことで、基質/触媒比50から1000の条件下でも反応が効率良く進行することを見いだした。特にスルホニル置換基がCH_3やC_6F_5を有するアミド触媒を用いてトルエン溶媒中での反応によりほほ定量的に99%eeのキラル付加体が得られる。キラル生成物が簡便に合成できるなど実用性に優れた方法である。 3)DFT計算手法を使って、協奏機能アミド触媒による水やアンモニア小分子の活性化プロセスの錯体化学的考察を行い、中心金属周りの立体配座が反応性に重要な影響を与えることなど明らかにした。また不斉炭素-炭素結合形成反応の鍵中間体としてイオン対型錯体の重要性を予測するとともに触媒活性向上の要因を提示した。この計算予測の妥当性を実験化学的に実証し、上記2で示したように実用レベルの触媒活性を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水、アンモニアや水素など汎用小分子の活性化と有効利用に関する基礎的知見を得ることができた。予想以上に早い計算化学の習熟と大型計算機の有効利用により期待以上の成果が得られたものと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
水やアンモニアの活性化および取り込み反応は、現状では量論反応であり、今後とも計算化学の助けにより、触媒反応への展開をめざす。
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