2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10F00345
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 正浩 京都大学, 工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LIU Lantao 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ホウ素 / ニッケル / 不斉合成 / 挿入反応 |
Research Abstract |
ピリジンの窒素原子とホウ素が分子内で配位結合したピリジン-ホラン分子内錯体は、対応する炭素体と等電子構造である。この二種類のπ共役系化合物は立体的には酷似した構造を有するが、その電子的な性質は大きく異なり、ピリジン-ボラン錯体の方がかなり低いLUMOを持つことがわかっている。従って、ピリジン-ボラン錯体部位を持つ化合物は対応する炭素類縁体と同様の立体環境を有する一方で、電子的には大きく異なる性質を持つ触媒・機能性材料となることが期待される。本研究では我々が独自に見いだしたピリジンを配向基とする芳香族求電子ホウ素化反応を基盤技術とし、まず始めにフルオレニルアニオンと等電子構造を有するホウ素アニオンの創製、およびその構造・物性の解明を目的として検討を行ってきた。まず、ホウ素上にクロロ基を有するピリジン-ボラン錯体を2(2-スタニルフェニル)ピリジンとジクロロフェニルボランの金属交換反応によって合成した。これに金属リチウムを作用させると、反応溶液が赤色になり、NMRシグナルの高磁場シフトが観測された。また、この化合物にヨウ化メチルを作用させると、ホウ素上がメチル化された生成物が得られた。このことから、ホウ素アニオンは生成しているものと考えられる。続いてこのアニオン種の構造を決定すべく、単離、結晶化を試みた。様々な溶媒での再結晶や、置換基を導入してより結晶化しやすい化合物の合成検討を行ったが、単離には至らなかった。一方、平行して行っていた不斉触媒反応開発検討の結果、キラルなニッケル触媒によって、シクロブタノンへの不斉アルケン挿入反応が進行することを見いだした。これを用いて医薬品候補化合物の合成中間体として利用されているベンゾビシクロ[2.2.2]オクテノンの効率的合成法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初、フルオレニルアニオンと等電子構造を有するホウ素アニオンの創製を第一の目的として検討を行ってきた。種々検討を行った結果、ホウ素アニオンが生成していることを示唆するNMRデータや反応性に関するデータは得られたものの、単離して構造を確定することはできなかったため「(4)遅れている」とした。一方、平行して行っていた不斉触媒反応の検討の結果、ニッケル触媒を用いたシクロブタノンへの不斉アルケン挿入反応を見いだすことができたため、研究の方向性を転換して、ベンゾビシクロ[2.2.2]オクテノンの合成法を開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討の結果、フルオレニルアニオンと等電子構造を有するホウ素アニオンは合成可能であり、また熱的には比較的安定で取り扱いが可能であることがわかっている。今後の課題は結晶化可能なアニオン種を合成すべく、適切な対カチオンを持つホウ素アニオンを合成する反応を見いだす必要がある。もしくは、生成したアニオンを遷移金属錯体に配位させることで安定化させ、単離、構造決定を行う予定である。一方、不斉触媒反応に関しては、シクロブタノンに代えてアゼチジノンを用いたキヌクリジン誘導体の不斉合成法の開発、中間体となるニッケラサイクルを単離し、これをX線結晶構造解析することでエナンチオ選択性の発現機構の解明、分子間での不斉アルケン挿入反応について検討を行う予定である。
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Research Products
(2 results)