2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化グラフェンを基礎としたナノグラフェンの作成とその特異な電子・磁気特性
Project/Area Number |
10F00350
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
榎 敏明 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RAJEEVKUMAR VattakattuRamacrishnan 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 電子・電気材料 / 磁性 / ナノ材料 / 表面・界面物性 |
Research Abstract |
フェノール起源の活性炭素繊維を強酸化剤KMnO4を用いて、ACF/KMnO_4~4までの組成の条件下で酸化した。酸化処理前のACF試料は、軌道反磁性磁化率χ_<orb>〓-7×10^<-7>emu/g、局在スピン濃度N_<spin〓3.7x10^<19>/g、Weiss温度Θ〓-5Kと見積もられ、エッジ状態スピンが反強磁性的に互いに相互作用しており、大きな軌道反磁性からπ電子構造はナノグラフェン全体に広がっていることが示唆される。酸化をおこなうと、酸化剤濃度の増加に従い軌道磁性磁化率の絶対値は単調に減少し、最高酸化条件ACF/KMnO_4~4では、ほぼ0となり(χ_<orb>〓-1.2×10^<-7>emu/g)、π電子構造がグラフェンの酸化により失われることが明らかとなった。局在スピン濃度は酸化に従って大きく増加し、最高酸化条件ではN_<spin>〓4.8×10^<20>/gと未酸化試料の10倍以上となった。また、Weiss温度はΘ〓v-2Kに低下した。NEXAFSスペクトルは未酸化試料では、伝導π*バンド(285.7eV)とフェルミ準位付近に存在する非結合エッジ状態(284.5eV)の2つの寄与で記述される。酸化を進めると、伝導π*バンドとエッジ状態の強度は次第に減少し、π電子構造の酸化による破壊がおこっていることが示唆された。一方、酸化により、新たにもう一つのNEXAFSピークが285.1eVに生じることが見出された。このピークの強度は酸化により次第に増加し、酸化条件ACF/KMnO_4~2において、エッジ状態強度を上回ることが明らかとなった。このような新たなピークは弱い負の化学シフト(-0.6eV)を持ち、スクリーニング効果が小さいことから、局所状態密度の小さい非結合性の電子状態に起因するものと思われ、フェルミ準位付近に存在する酸化により誘起された非結合状態に同定されるものと思われる。このことを踏まえると、酸化過程において、単調に減少するグラフェン固有のエッジ状態の減少を上回る急激な酸化誘起の非結合状態の増加がおこり、酸化過程においては、磁気挙動に後者の局在スピンが支配的となるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化グラフェンの磁性の研究を行い、電子構造に磁性の起源を調べた。今まで考えられていた磁性の様子と異なり、酸化により誘起されたスピンが交換相互作用により強磁性的揺らぎを持つことが明らかとなった。この結果は大変興味あることであり、春の化学会年会に発表予定であり、現在、論文の作製も並行して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
NEXAFSの結果からは、酸化により新たな局在スピンが発生し、磁気測定からそのスピンが強磁性的用語作用下にあることが示唆される。内部磁場の分布、古典的な磁気モーメントの挙動を考慮に入れ、磁性の解析を行うこととともに、酸化の度合いの違う試料を種々作成し、詳細な磁性と酸化構造との相関を明らかにすることを計画している。
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Research Products
(1 results)