Research Abstract |
波長350nm以下の紫外光は,消毒や殺菌,ICや液晶の製造プロセスなど,バイオテクノロジーからエレクトロニクスまで広い分野に利用されている.現在のところ,光源としては,エキシマランプ・レーザや水銀ランプなどが用いられているが,フッ素や塩素,水銀など環境負荷の高い材料が用いられており,しかも効率が低く,寿命が短いといった欠点を持っている.これに対して本研究では,窒化物半導体AlGaNをベースとした量子井戸構造による固体光源を対象とする.p型伝導型制御が困難であるという,材料固有の問題を回避するため,電子線励起により高効率発光を得ることを目標としている.本年度は,高品質AlGaN/AlN量子井戸構造の作製と発光特性の評価を行い,電子線励起発光に関して基礎的な実験を行った結晶成長には,申請者が見いだした有機金属気相成長法を基本とした流量変調成長法を用いた.基礎光学特性評価としては,発光の不均一広がりの起源を同定するために,現有の走査型電子顕微鏡に附属の電子線励起発光分光装置によるナノスコピックな分光を行った.その結果,Al組成が空間的にサブミクロンオーダで揺らいでおり,それによるキャリア/励起子局在が,発光の高効率化に貢献していることを見出した.さらに,結晶成長条件の検討により,発光波長237nmにおいて内部量子効率69%を得た.この値は,現時点で世界最高の値である.このような高品質AlGaN/AlN量子井戸を電子線励起してその発光特性を調べた.まず,照射電子線のサンプル内での分布をモンテカルロシミュレーションしておき,それにあわせた素子構造とした.電子線励起発光の特性としては,電力効率40%,光出力100mWが得られた.とくに効率は深紫外発光ダイオードより一桁高く,電子線励起方式の有用性を示している.
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