2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10F00429
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
南沢 享 早稲田大学, 理工学術院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JIAO Qinbin 早稲田大学, 理工学術院, 外国人特別研究員
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Keywords | カルシウム / 心筋 / 筋小胞体 / 心不全 / 遺伝子改変マウス / ストレス / 電気生理学 / Creリコンビナーゼ |
Research Abstract |
心筋の収縮弛緩時における細胞内Ca^<2+>濃度の変化は、主に筋小胞体でのCa^<2+>の出入りによって制御され、心不全時にはその機能が低下している。本研究では、心不全治療の新しい治療方法を見出すため、心筋筋小胞体膜Ca^<2+>ポンプ(SERCA2a)活性を制御機構の解明をめざしている。 1.sarcolipin欠損マウスの心機能解析 sarcolipinはphospholambanと相同性が高く、心房筋に特異的に発現している。その特性を利用してCreリコンビナーゼ遺伝子が心房筋に特異的に発現するような、Creリコンビナーゼknockin-sarcolipin knockoutマウスを作成した。sarcolipin knockoutマウスのヘテロ型は野生型と比較して、生存率や妊娠率に差が見られなかった。心エコー法や心臓内圧測定法検査の結果、心室筋収縮弛緩特性に差がないことが判明した。また、摘出心臓において、心房刺激を加えるなどの電気生理学的検討を行ったが、電気生理学的にもヘテロ型と野生型には有意な差が認められなかった。さらに心房・心室筋組織を摘出し、カルシウムハンドリングタンパク質を調べた結果においても、ヘテロ型と野生型には有意な差が認められなかった。以上のことから、Creリコンビナーゼknockin-sarcolipin knockoutマウスのヘテロ型は野生型マウスと遜色ない心機能を有していると考えられた。 2.sarcalumenin欠損マウスの加齢に伴う心機能変化 sarcalumeninは心筋および骨格筋筋小胞体に発現するカルシウム結合蛋白であり、SERCA活性を維持し、筋小胞体内カルシウム調節に関与する。先行研究において、sarcalumenin欠損マウスでは、心臓への圧負荷によって、より強く心機能低下やSERCA2a活性低下を引き起こすことが示されている。圧負荷のような病的ストレスと生理的ストレスとでは生体の応答はしばしば異なるため、sarcalumeninの有無によって、加齢による生理的ストレスに対する心機能の変化が異なるか否かを調べた。その結果、sarcalumeninが欠損していると加齢に伴って、より心機能の低下が強く認められた。さらにsarcalumenin欠損マウスでは、加齢に伴う小胞体ストレスがより強く働くことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたsarcolipin欠損マウスとsarcalumenin欠損マウスの解析が順調に進み、この分子の筋小胞体における役割の一端を明らかにすることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
sarcalumenin cDNAを心筋特異的に発現するαミオシン重鎖プロモーターの下流に組込みこんだトランスジェニックマウスを作成する。さらに筋小胞体でのカルシウム調節機能が低下しているsarcalumenin欠損マウスと機能が亢進していることが予測されるsarcalumenin過剰発現マウスをモデルとして、これらの生体や細胞に小胞体ストレスを与え、心機能や心筋細胞死への影響を調べる。Creリコンビナーゼknockin-sarcolipin knockoutマウスを利用して房筋特異的な遺伝子発現を行い、心房筋特有の分化過程・機能・病態を調べる。なお、研究代表者の南沢が、2012年5月に早稲田大学から東京慈恵会医科大学に異動する。研究室の再整備に若干の時間がかかることが予測されるが、研究上の遅滞を来さないように早稲田大学でも研究を継続できるように対処する。
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Research Products
(6 results)